第34章 手紙とハンドクリームが起こした奇跡✳︎宇髄さん
その時のテレビの内容はといえば、メンバーの容姿ばかりに触れ、その手で、声で、紡がれる音達がいかに素晴らしいかにほとんど触れられていなかったのだ。
「あの時の番組!本っっっ当に最悪でした!この企画を考えたプロデューサー、何にもわかってない!ってテレビの前ですんごい憤りを感じたんです!」
「だろう?俺たちも、あんな内容だってわかってたら取材なんか即断ってたところだぜ。でよ、それからまともなファンレターが来なくなったわけよ。ファンレターじゃなくてただの自己アピール文!誰がお前らのカップのサイズを教えろっつった!歌の!曲の!演奏の感想を書きやがれ!」
「そんな人たち私はファンなんて認めません!曲の最中キャーキャー騒ぐな!☆HASHIRA☆の音が聴こえないだろぉ!」
「…こいつ、かなり酔ってるみたいだがァ平気か?」
「先ほどまでの様子が嘘のように饒舌だな!」
「はい!私の☆HASHIRA☆の音への愛はまだまだ語りつくせません!」
「…ダメそうだなァ」
不死川さんが、ビールジョッキを片手に持ったまま呆れた表情でこちらを見ていた。
「ダメじゃありません!不死川さんのドラムサウンドは最高に格好いいんです!」
両手にこぶしを作り、テーブルに押し当て、前のめりになりながら不死川さんをじっと見る。
「そんな話してねぇだろうがァ」
「Green Street!あの間奏のドラム!どうしてあんなに凄いんですか!?手と足どんな風に動いてるんです!?あそこの部分だけ収録した音源が欲しいくらい!」
「…へいへいありがとさん酔っ払い」
「酔っていません!」
「へいへいそうかよォ」
そんな私と不死川さんのやり取りを、不死川さんの隣に座っている胡蝶さんが真剣な表情で聞きながらメモのようなものを取っている。
「胡蝶さん何を書いているんですか?」
「あ、お気になさらず。不死川さん、いいドラムを叩きますよね。それで、ギターの煉獄さんはいかがでしょう?」
「煉獄さんのギター?」
フイッと煉獄さんの方に顔を向けると、ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべながら私の事を見ていた。