第34章 手紙とハンドクリームが起こした奇跡✳︎宇髄さん
「間違いないわ!でもでも伊黒さん!すずねちゃんは間抜けなんかじゃないわ!とってもかわいくて優しい子よ」
何やら2人が私について話しているような気もするが、伊黒さんの奥にさらに広がる夢のような世界に私の思考回路は完全に停止していた。
…☆HASHIRA☆だ…
ビールの入ったジョッキを片手に真剣に話し込んでいる様子の冨岡さん、煉獄さん、不死川さん、そして天元さんだったが(いや煉獄さんはビールよりもつまみをずっともぐもぐしている)私の存在に気が付いた不死川さんが開いている左手でこちらを指さし何かを言っているようだった。
すると次の瞬間
グリン
「お前かぁ!」
「…っ!!!」
天元さんが私の方に顔を向けたことで、その赤茶色の瞳と視線が合った。
…今日…二回目…
私の頭はもうすっかりキャパオーバーを迎えていたというのに
…っやだ…近づいてくるんですけどぉぉぉぉぉ!
手に持っていたジョッキをテーブルに置き、立ち上がった天元さんがこちらに向かって近づいてくるではないか。
思わず蜜璃ちゃんの背中にスッと隠れるも
「めっちゃ見えてるし。隠れられてねぇから」
背の高い天元さんに上から見下ろされてしまえば全くもってそんな行動に意味はなく、ガシっとその大きな手に二の腕を掴まれ
「お前ちょっとこっち来い」
「…っえ…いや…ちょっと…」
テーブル席の方に連行されそうになる。
…無理!無理無理!!無理無理無理!!!
いったい自分の身に何が起こっているのか全く理解できないが、今蜜璃ちゃんの手を離したら自分がどうにかなってしまうことだけは理解できた。
「…甘露寺が痛がるだろう。その手を離せ」
伊黒さんが蛇のように鋭い視線で私を睨んでいるが、そんなことを気にしている余裕は1ミリたりともない。
「っすみません…!でも…私この手を離したら…脳みそが爆発しちゃうっ!!!」
「そんなっ…ダメよすずねちゃん!爆発なんてしないで!」
そんな頓珍漢な会話を繰り広げていると、背後のドアがガラリと開いた。