第7章 その音を守るよ-後編-【音好きシリーズ】
「みんな、調子はどう?」
「あ!すずね姉ちゃーん!来るのが遅いー!!!」
病室を覗き込むと、ちょうどみんな揃っていたようで善逸、炭治郎くん、伊之助くんが仲良く並んでベッドに身体を起こした状態でそこに居た。
「善逸。相変わらずうるさいね」
ニコリと微笑む私に
「またもや辛辣ぅ!でも好きぃ!!」
善逸は相変わらずな様子だった。
「3人とも元気そうで良かった」
お饅頭を美味しそうに食べる(善逸と伊之助くんは奪い合っていると言った方が正しいが)3人を見ていると、なんだか心が癒されて行くようだった。
けれども。
「すずねさんも!もう任務に復帰してるんですよね?俺たちよりもよっぽど激しく戦っていたのに…強い人はやっぱり凄いです!」
私が強い?そんなこと、少しもないのに。
私が弱かったから
うまく出来なかったから
何の為にあそこに呼ばれたのか
ずっと。ずっと。意味がないとわかっていても。天元さんや胡蝶様にあぁ言われても。自分を責める気持ちがずっと拭えなかった。
「…すずね姉ちゃん。どうしてそんな悲しい音を出してるの?」
善逸がベットから降り、私の両手をギュッと握り締めてくれた。
弟弟子の優しさに、ずっと我慢していた気持ちがひょっこりと顔を出してしまった。
「…っ私…!」
ツーっと一筋、目から涙がこぼれ落ちてしまう。
「イヤァァァ!なになにどうしたの!?なんで泣くの!?すずね姉ちゃーん!」
そんな私を抱きしめ、善逸は慌てふためいていた。
「お前どうした?腹が減ってんのか?」
「そんなわけあるかぁ!」
「…すずねさん…」
伊之助くんはともかく、炭治郎くんの優しく私の名前を呼ぶ声が涙を余計に誘う。
人前で涙を流すなんて、何年ぶりだろう。こんな事なら、善逸のところになんか来るんじゃなかった。
無駄だと分かっていても、泣いている顔を見られたくなくて、善逸の身体に顔を押し付けるようにしてそれを隠す。
だから気づくことが出来なかった。
「柏木は今日、俺に用があってここに来たのだろう?すまないが彼女を借りて行く」
炎柱様の気配が、この部屋に近づいて来ていたことに。
「…っえ?」
パッと顔を向けた先にいたのは、ニッコリと笑顔を浮かべた炎柱様。