第34章 手紙とハンドクリームが起こした奇跡✳︎宇髄さん
…プレゼントボックス…いつもみたいに受付のすぐそばにあるよね…準備しておこう
肩にかけていたバックから、天元さんのイメージカラーのアメジスト色の紙袋を取り出す。その中にバックの奥に潜ませておいたファンレターとプレゼントのハンドクリームを入れた。値が張ったものを入れるのはなんだか気が引けるが、ハンドクリームなら本人が使わなくてもスタッフの人や、恋人(あれだけ素敵な人だもん絶対にいる)が使うだろうといつも同じものを入れていた。大きめのダイヤモンドを模したキラキラのシールで紙袋の口を閉じながら歩いていると
”ちょっと待って!”
蜜璃ちゃんの声が聞こえたような気がした。けれども丁度
「こちらへどうぞ~」
と、スタッフの人に案内されてしまい、立ち止まることは叶わなかった。首だけ蜜璃ちゃんの方に振り向くと、蜜璃ちゃんは驚いた表情で私のことを見ていた。
…どうかしたのかな?
疑問に思ったものの、戻るわけにもいかないので蜜璃ちゃんに向け軽く手を振るとそのままライブ会場の階段を上った。
階段を昇りながら蜜璃ちゃんとのやり取りを思い出していると
…そういえば蜜璃ちゃん…今日のセトリを知っているみたいだった…事前にセトリを公表することはないし…もしかして関係者だったのかな?
そんな疑問が頭にわいて来た。
…そうだとしたら…もっと話がしてみたかったかも
そんなことを考えなが会場に続く階段を1段、また1段と昇って行った。
…あ、あった
階段を昇り切った先の左手にプレゼントボックスは設置されていた。手に持っていた紙袋を中に入れようと覗き込むと、もうすでにかなりのプレゼントが入れられている。そんなに重いものではないので心配いらないとは思いながらも、他の人がボックスに入れたプレゼントを潰すことのないようにゆっくりと紙袋を中に入れた。
…手紙…読んでくれるといいな
そんな淡い期待を胸に抱き、開きっぱなしになっている重そうな扉を抜け会場の中に足を踏み入れた。