第34章 手紙とハンドクリームが起こした奇跡✳︎宇髄さん
「…ってなんで増えるの!?」
無情にも”12分”から”13分”に増えた数字に、往来の真ん中で思わず大きめの独り言を言ってしまう。
…だめだめ。焦らないで。周りを周りの景色をよく見るの。ここに電気屋さんがあるから…きっと地図のここにあたるはず…だから方向は…あっち?…うぅん…こっち?
きょろきょろと辺りを見回してみるもやはりわからない。かといって、誰かに道を尋ねる勇気もない。
…自分で…何とかしなきゃ。でも…あぁどうしよう…どんどん時間が無くなっていく。このままじゃ間に合わなくなっちゃう…今日を楽しみに仕事を頑張って来たのに…たどり着けないかもしれない…
そう思うと、道の真ん中にもかかわらず、鼻の奥がツーンとしてきた。
その場に立ち尽くしていると
「…あの…もしかしてライブハウスDEMONに行こうとしているのかしら?」
「…え?」
鈴が転げたようなかわいらしい声がした方に顔を向けると、桜餅色の髪の毛を持つかわいい女の子の姿がそこにあった。
突然かわいらしい女の子に声を掛けられ驚きはしたものの
「…っそうです!そこに行きたくて…でも…迷子になちゃって…っ!」
女の子から発せられたその言葉に、”私の前に天使が舞い降りた!”なんて大げさにも聞こえる言葉が頭に浮かんでくる。
「やっぱり!鞄に☆HASHIRA☆の限定バッチがついてるからそうじゃないかなぁって思ったの!私も今から向かうところだから一緒に行きましょう」
「…っありがとうございます!」
こうして私は、道の真ん中で桜餅色の髪の毛の天使こと甘露寺蜜璃ちゃんとともにライブハウスに向かうこととなった。
「ふふふ…パンケーキのお代わりを食べていたらぎりぎりになっちゃっただなんて、蜜璃ちゃんったらかわいい」
「だってだって!生地はもちもちクリームは濃厚はちみつかけ放題だったのよ?美味しくって5枚も食べちゃったわ」
「えー!5枚!?その細い身体のどこに入るの?」
そんな会話を繰り広げながら歩いていると、あんなにも迷っていたのが噓のようにあっという間にライブハウスに到着した。