第33章 泣き虫鳴柱は長男に甘えたい✳︎炭治郎
呼ばれた声の方へと振り向くと
「…っ…ごめんなさい…!」
俺に向け深く頭を下げているすずねの姿がそこにあった。
…この匂いも、なんだか凄く懐かしいな
普段は禰󠄀豆子に負けず劣らずしっかりもので、下の弟の面倒も、家の手伝いも良くしてくれていた花子でも、たまには失敗することや、嘘をついてしまうこともあった。そんな時、花子から香ってきた匂いとよく似ていた。
思わず笑みが浮かんでしまった俺を
「…っ…!」
すずねは驚き、目を丸くしながら見ていた。
ゆっくりとすずねへと歩み寄り
「もう炭兄って呼んでくれないの?」
そう笑いかけた。
「…っ…怒って…ないの?」
大きな瞳を揺らしながらそう尋ねてくるすずねに
「怒る?俺が?どうして?」
そう尋ねながら目の前で立ち止まる。
「…っだって!私…22歳で…柱で…いい大人なのに…年下の炭治郎君のこと、お兄ちゃんみたいに思って…甘えて…っ…恥ずかしいよね!気持ち悪いよね!ごめんね!もう…あんな恥ずかしい呼び方もしないし会いに行ったりしないから!」
そう早口で言うすずねからは、思わずつられてしまいそうなほどの悲しい匂いが漂ってきていた。
俺はそんなすずねの頭のてっぺんに
ポン
と、初めて会った時と同じように自分の手のひらを置いた。
「…っ!」
すずねは息を飲み、俺の顔をパッと見上げる。
「いつもみたいに、炭兄って呼んでいいんだ」
「…っ…でも…」
ボロボロと顔を歪めながら泣く姿が可哀想で、その小さな身体に腕を回しぎゅっと抱き寄せる。
抱き寄せられ、ビクッと身体を大きく揺らしたすずねが落ち着くようにとその背中をポンポンとリズミカルに優しく叩いた。
「さっき言っただろ?柱だろうが22歳だろうが関係ない。俺にとって、すずねはすずねだ!」
そう言ってニコリと笑いかけると
「…っ…炭兄っ!」
すずねが俺の身体にギュッと腕を回し、しっかりと抱き返して来てくれた。