第33章 泣き虫鳴柱は長男に甘えたい✳︎炭治郎
強そうな匂いがするとは思ってたけど…まさか煉獄さんや冨岡さんと同じ柱だなんて…あんなに甘えん坊で泣き虫なすずねが…柱だなんて…信じられないっ!
あまりの衝撃に立ち尽くしていると
「…隠してて…ごめんなさい」
すずねが、目になみなみと涙を浮かべながら俺の方へと振り返った。
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鬼になった妹を人間に戻すために隊に入隊した男の子がいると聞いたとき、死んだ兄のことを思い出した。
あぁ…そんなにもお兄ちゃんに大切にしてもらえるなんて…羨ましい
そんな不謹慎なことを考えてしまったことを鮮明に覚えている。
幼いころに両親を亡くした私にとって、兄は父であり母でもあった。優しくて、厳しくて、いつも笑顔で…そんな兄のことが私は大好きだった。
なのに、大好きな兄は、私の目の前で鬼に殺されてしまった。間一髪のところで助けられ生き残ってしまった私は、その鬼に復讐することだけを目標に自らの手で育手を見つけ、最終選別を突破する力を蓄え隊士になった。死に物狂いで任務をこなし、鍛錬をこなし…運も重なってか、いつしか鳴柱という最高地位にまで昇りつめていた。
それでも、あの時兄を亡き者にした鬼と見た目が似ていたり、声や気配が似ていると、どうしてもあの時の光景が思い出されて涙が出てくるのを止められなかった。
”柱になったんだもん…泣くなんてだめ”
そう自分に言い聞かせながらも、結局は涙を止めることは出来ず、2回に1回は泣きながら鬼の頸を切り落としていた。
あの日も、炭兄と初めて会った時もそうだった。
…この鬼…あの鬼と…見た目が似てる
視界に映すのが怖くて、不快で堪らなくて
「やだもぉ…あっち行ってよ!」
ボロボロ泣きながら、私を楽し気に見ている鬼を睨みつけていた。
…見た目もこんなんだし…泣いてるんだもん…弱いと思われるのは当然か