第33章 泣き虫鳴柱は長男に甘えたい✳︎炭治郎
ぎゃいのぎゃの言われているうちに、いつの間にかすずねの姿は見えなくなっており、ただただ森の中へと続いていく田んぼ道が見えるだけだった。
…すずね…大抵いつもこの時間になると任務だっていなくなるけどどんな任務に就いてるんだろう。俺に甘えたいっていう匂いがいつもするのに、この間街でたまたま見かけたときは、別人かと思うくらい雰囲気が違っていたし。
「善逸」
「なんだよ炭次郎」
「善逸は同じ雷の呼吸の使い手としてすずねをどう思う?」
「…すずねちゃん?…滅茶苦茶強いと思う。見た目は全くそんな感じしないし、実際に型を使っているのをみたことないからはっきりとは言えないけど…たまに聞こえる音が物凄い。聞き間違えかたと思ったもん」
善逸は、すずねが消えていった森の方をじっと見ながらそう言った。
「俺もそう思う。任務が被るようなことがあれば、もっとすずねのことがわかると思うんだけど…」
「伊之助もないっていってたな」
「あぁ」
泣きながら鬼と対峙をしているのを見て以降、一度も任務中にすずねと会うことはなかった。
いったい…どんな子なんだろう
心の中にそんな疑問が浮かんで来たものの
「北の山にムカエェ~!炭治郎!善逸!山にムカエェ~!」
と、鴉から指令を告げられサッと気持ちを切り替える。
「よし。行くぞ善逸!」
「やだやだぁ行きたくないぃ!炭治郎ぉ!俺を守ってくれぇぇぇ!」
駄々を捏ね、泣きながら俺の羽織を掴む善逸を引きずりながら任務へと出発した。
————————————-
そんなやり取りがあった数週間後。
最近の禰󠄀豆子の様子を報告するようにと、臨時の柱合会議に呼ばれてしまった俺は、隠の後藤さんに背負われお館様の屋敷に向かっていた(禰󠄀豆子は連れてこなくてもいいと言われたので、蝶屋敷で留守番してもらうことにした)。