第33章 泣き虫鳴柱は長男に甘えたい✳︎炭治郎
「なるほど?」
「あ、いいのいいの。こっちの話だから気にしないで!そんなことよりも…」
すずねは俺が頭の上に置いたままにしていた手を取り、ぎゅっと両手で握りしめ
「あ…あの…私…昔…お兄ちゃんがいて…その…鬼に殺されちゃって…今はもう…いなくて…」
もごもごと口ごもりながらそう言う様子は、やっぱり俺の長男スイッチを激しく連打してくる。
「…非常識で…恥ずかしいお願いだってことはわかってるんだけど…炭治郎君のこと…炭兄って…呼んでも良い…かな…?」
甘えたい妹臭をぷんぷん匂わせ、恥ずかしそうにお願いしてくるすずねに
「いいぞぉ。好きなだけ呼んでいいぞぉ」
そう答えない筈がない。
「ありがとう!炭兄!」
そんなこんなで俺とすずね、もちろん禰󠄀豆子も、ちょくちょく顔を合わせては、兄1人、仲のいい妹2のように楽しいひと時を過ごすようになった。
「炭治郎はいいよなぁ~」
「ん?何がだ?」
満面の笑みを浮かべながら俺たち手を振っているすずねに、俺の隣にいる善逸はだらしのない笑みを浮かべながら手を振り返している。
「何って!すずねちゃんのことに決まってるだろ!あんなかわいい子にあんなに好かれて…炭治郎ばっかずるいぃぃぃっ!!!」
善逸はすずねちゃんの方を指差しながら頭を左右に、右手に作った握り拳を上下に振りながら必死な形相でそう俺に訴えかけてきた。
「なにがずるいんだ?すずねの俺に対する気持ちがそんなんじゃないってことくらい善逸の耳ならわかるだろう?」
俺がそう言うも、善逸はいまいち納得がいかないようで不機嫌な顔をしながら俺のことをじっと見ている。
「わかってるけどさぁ…どちらにしろあんなかわいい子に好かれてるんだからずるいっ!俺も善兄とか呼ばれてみたいぃぃぃ!!!」
「善逸は…どちらかといえばお兄ちゃんっていうより弟の方が似合うと思うぞ?」
「うっせーくそ真面目ぇぇえ!そんくらい自分でもわかってるわぁぁあ!!!」