第32章 迷子の迷子の鬼狩り様✳︎煉獄さん
「…煉獄様ですね。それで、私の家に何かごようかな?」
叔父がこやかな笑みを浮かべながらそう言った。すると
「…”私の家”?」
煉獄様は静かな声でそう言い
「…ひっ…」
鋭い眼光を叔父へと向けた。
ただならぬその雰囲気に、叔父の顔も、男の顔もみるみるうちに白くなっていく。
「俺の認識ではこの家はそこにいる彼女、すずねさんの家だと認識している」
「きょ…今日まではそうでしたね。ですが、その娘はねぇ、私から多額な借金をしていてね…その返済をするために、こ、この家と、その身を売って返すって言っていてね…」
「なるほど」
「私もね、そこまでしなくてもいいって言ったんだけど、本人がどうしてもって言うから仕方なくだねぇ…」
汗をだらだら流し、ところどころつっかえながら言ったそれらの言葉は、例え感の鋭そうな煉獄様でなくとも、嘘だということがわかるだろう。
極めつけが
「…っ俺は関係ねぇ!金で雇われただけだ!」
「っ貴様…こら逃げるなぁあ!」
手に持っていた瓶と、薬品の染み込んだ布を残し出て行った男の行動だ。
煉獄様は、逃げていく男を見送り
「だそうだ!」
そう言って再び叔父に視線を向けた。炎柱様の視線を受けた叔父は、ザリッと一歩後ずさったものの
「…っだったらなんだ!?俺はなぁ、俺が受け取るべき金をとりに来ただけだ!俺はあいつの兄貴だ!金をもらう権利はある!隠し持ってたその小娘が全部悪いんだ!自業自得だ!!!」
開き直り、私のことをものすごい形相で睨んで来る。
しばらく沈黙が続いた後
「…やはり俺は間違っていなかったようだ」
煉獄様はそう呟き、腰に差していた刀の柄に手を伸ばした。そんな煉獄様の行動に
「っ…な…何をするつもりだ…!?」
叔父は、金の入った袋を胸に抱き、ブルブルと震え始る。
「このような非人道的な行いが出来るのは人の皮を被った鬼くらいだろう。つまり貴方は鬼だ。即ち鬼狩りである俺が切るべき対象物」
スラリと刀を抜いた煉獄様が叔父の方へと向き直り
「その汚い首…俺が切り落としてやろう!」
その行動に全くそぐわない快活な声でそう言うと、叔父との距離を目にも留まらぬ速さで詰めた。
「ッヒィィィィ!」
煉獄様のその行動に、叔父はその場で尻餅をつく。