第32章 迷子の迷子の鬼狩り様✳︎煉獄さん
急いで扉を閉めようとするも、名前すら把握してない叔父の手足に阻まれ、更には
「…あの男はいねぇようだな」
「っ…あんたは…!」
町で、私を探していた男もいたとあらば、私一人の力で叶うはずもない。
「…何しに来たの…?」
扉に手をかけ、叔父の顔をじっと睨みつける。叔父はそんな私をにやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべながら見ていた。
「いやね。実は事業に失敗しちゃってね、もらったお金だけじゃ足らなくなったんだよ。すずねちゃんのところにまだ余ってたら、少しばかり分けてもらえないかなぁと思って」
「…お金なんてない。あったとしても…あんたになんか渡すわけないでしょ?」
もちろんないなんて嘘だ。お金は今私が立っている場所の真下…つまり土の中に、麻袋ごと埋めてある。必要な分だけを手元に置き、残りは必ずここに隠していた。
「まあそう言うと思ってたよ。じゃあやっぱり…あの飯炊き当番…古賀だっけ?あの爺さんに、何か知らないか聞いてみるしかない「っだめ!!!!!」……へぇぇ」
叔父の口から古賀さんの名前が出たことで焦った私は、叔父の言葉を大声で遮った。でもそれは、古賀さんが何かを知っていると自ら言ってしまっているのと同じことで、叔父は、私の顔をにやにやと馬鹿にするような目をしながら見ていた。
…私の…馬鹿…!
そんなことを思っても、すべてはもう後の祭り。
「…かわいいかわいい姪っ子であるすずねが”だめ”っていうのであれば、そのお願いを聞いてあげないこともないけど…ここにお金がないっていうのであれば、しょうがないよね?だって叔父さんも、命がかかってるからさぁ」
叔父の命がどうなろうとどうでもいい。けれども、今ここで金を渡さなければ、古賀さん夫婦に迷惑が掛かってしまうことは明白だった。
「…足の下」
「あぁん?」
「…私の足の下…掘って。…お金は…麻袋の中に…入ってる」
悔しさで震える声を懸命に抑えながらそう言うと
「…ふっ…そうかそうか。じゃあ確認するから、ちょっと上がらせてもらうね」
そう言って叔父は、隠れ家の中に侵入してきた。そしてその後、それに続くように昨日の男も入ってくる。