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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第32章 迷子の迷子の鬼狩り様✳︎煉獄さん


自分の行動の根底に、”亡き両親との約束を守りたい”と思う気持ちがあることは確かだ。けれども、なんとなくそれだけではないような気がした。

ぐるぐると思考を巡らせてみるも、これといった答えは出てこない。


…ま…いいか…


答えは出てこないが、だからと言って特に困ることでもない。他にも食べごろの野菜を収穫し、邪魔にならないところに籠を置いておこうかと思ったのだが、煉獄様がきちんと寝ているかも気になったので一旦家の中に戻ることにした。

音をたてないように静かに部屋に入り、休んでいるところを覗くのは失礼かなと思いながらも、やはりどうしても気になってしまい、床に手を付き、首を可能な限り伸ばし布団を敷いた部屋を覗き込む。


覗き込んだ先に見えたのは、布団にきちんと入り、こちらに背を向け横たわっている煉獄様の姿だった。枕のすぐ上には、先ほどまで煉獄様が身に纏っていた黒い服と、まるで炎を模したような作りの羽織がきちんと畳まれた状態で置かれている。


…本当…やんちゃそうな見た目と…全然違う


20年弱生きてきて、あんなにも”清廉潔白”という言葉が似合う人間に会うのは初めてのことだ。

私が最後にきちんと会話という会話を交わした相手といえば、私の両親の突然の死を喜び、金、財産、土地のことばかり訪ねてくる親戚だ。そんな人たちに比べれば、例え会うのが今日初めてだとしても、煉獄様の方がよっぽど人間としての信用度は高い。


浮かせていた片足を元に戻し、野菜の入った籠を適当なところに置き、外へ戻ると畑いじりを再開した。





それから1時間もしない内に


「手入れの行き届いたいい畑だな!」

「…っもう起きてしまったんですか!?」


左手に刀を持った煉獄様が外に出てきた。


「仕事柄普段からそう長く寝ない。それよりも陽の光を浴びなくては!日光浴がてら、日課である鍛錬をしたい。借りている服が汚れてしまうかもしれないのだが…大丈夫だろうか?」


煉獄様は身に纏っている父の着流しの様子を確認するように眺めながら私にそう尋ねてくる。


「大丈夫です。元々、捨てようと思っていたものですから」

「…そうか!では遠慮なく鍛錬させてもらおう!」


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