• テキストサイズ

鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第7章 その音を守るよ-後編-【音好きシリーズ】


天元さんは腕を組み、ジッと私を見ている。

「どうしてそう思われるのですか?」

胡蝶様も優しい視線を私へと向けてくれている。私は胡蝶様の方に顔を向け、

「…炎柱様、もう今までのように戦う事は出来ないんですよね?」

そう問う。

「残念ですがそうですね。あの損傷状態です。煉獄さんだからこそ、今まで通りの呼吸は使えなくとも普通の生活に支障がない程度に回復することが見込めます。それだけで十分ではないですか」

「…でも…」

「お前あれか?"自分がもっと戦えればと"か思ってるんだろう?」

「…っ!」

天元さんに図星をつかれ、私はパッとその顔を仰ぎ見る。ズイッと顔を寄せられて、思わず後ずさりそうになる私に

「自惚れんな。お前に出来たのは精々あの程度。高望みはやめろ。お前はお前のやるべき事を果たしたんだ。…恥じる必要はない」

天元さんのその言葉に、心にこびりついていた後悔やら罪悪感がほんの少し落ちてくれたような気がした。

「そうですよ。生きて帰ってこられる。それ以上に素晴らしいことはありません。それより私が気になるのは、なぜ自ら身体を守ってくれるはずの隊服を破ったかと言う点です。破いたりしなければ、こんなひどい跡にはならなかったはずです」

「…っ痛」

そう言いながら胡蝶様は、私の赤黒く変色してしまっている脚に薬を塗ってくれている。

「身体を少しでも軽くして、早く動きたかったんです」

「だから上も下も破ってしまったと?」

「はい」

「それはそれは…野生的と言いますかなんと言いますか」

「伊之助くんなんて上半身裸じゃないですか。なのに顔には被り物ってどういう了見なんですかね?」

「女性でありながら自らをあの格好と比べてしまうのはどうかと」

「え?そうですか?動きやすくてある意味羨ましいと思ったのですが…」

そんな私の発言に、天元さんと胡蝶様はなんとも言えない顔でお互いに目を見合わせていた。





「こちらの病室をお使いください」

「ありがとうございました」

手当を終え、特に蝶屋敷での療養は必要ないと思っていた私だったが、身体を酷使し過ぎたことで全身が痛く、強打した脚もうまく動かせなかったため2.3日は大事をとって療養させてもらうことになった。

扉を閉め出て行こうとするアオイさんを引きとめた私は

「あの…炎柱様は?」

と問うた。
/ 898ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp