第7章 その音を守るよ-後編-【音好きシリーズ】
「…そんな怖い顔で、睨まないでください」
そう言った私を炎柱様は
「何故俺がこんなにも怒っているのか、自分の胸に聞いてみることだな」
目を細め、ジトリと睨みつけた。
「…わかりません」
首をすくめそう答えた私に
「うむ!この戦いが済んだら説教だな!」
この状況に似合わない明るい調子でそう答えた炎柱様は、再び上弦ノ参との戦いに身を投じた。
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結果として、私の任務は"成功"となった。クナイも爆弾も、最終的には止血剤も全て使い切り、もうダメかもしれないと思いながらもなんとか上弦ノ参を退けることが出来た。
けれどもその代償として、炎柱様は左目を失った。更に臓器の損傷も酷く、"今までと同じように呼吸を扱う事はできない"との事だった。炎柱様は今回の任務をもって、"炎柱"を引退することになるだろう。
私がもっと役に立てれば。
そんな思いが頭から消えてくれない。
私が負った怪我と言えば、上弦ノ参に吹っ飛ばされて木に激突した際に脚を強打し、出血した位だ。あの上弦ノ参はやはり女には手を出さない主義だったらしく、向こうから私に攻撃をしてくる事は最後までなかった。馬鹿にされているようで腹立たしかったが、結果としてはそんな鬼のよくわからない主義のお陰で、私は時間を稼ぐことが出来たのだと思う。
ガラッと無遠慮に扉が開かれ、思わずそちらに振り向く。
「随分派手な格好してやがるじゃねぇか」
「天元さん」
蝶屋敷で胡蝶様に治療を受けている私の元にやってきたのは見廻り明けの天元さんだ。
「宇髄さん。いくら継子とは言え柏木さんは女性ですよ。不用意に扉を開けるのは辞めてください」
「へいへいわかったよ。…それよりお前、どんな戦いしたらそんなふうに隊服が破けんだ?」
天元さんの視線がじーっと私の脚へと注がれている。
「…じろじろ見ないでくださいよ変態」
「俺がお前の脚をそんな目で見るわけねぇだろボケ。俺の継子の癖に未熟だって言ってんだ」
「それはそれで失礼なのではないですか?」
「そうですよねぇ胡蝶様。この隊服は自分で破いたんです!だから未熟でもなんでも…」
煉獄杏寿郎の命は守ることが出来た。けれども私は、"炎柱・煉獄杏寿郎"を守り切ることが出来なかった。
「天元さんの言う通り…私は未熟です…」