第7章 その音を守るよ-後編-【音好きシリーズ】
「残念ですが、その命令には従えません。私には私の任務があります」
「何を言っている!?上官命令だ!大人しく従うんだ!」
今まで向けられたことのない怒気を孕んだ声が私に向けられ、その声がビリビリと頭と耳に響く。
「…っうるさいですね。文句があるならお館様と天元さんに直接言ってくだ…っさい!」
手始めにクナイと一緒に手に隠し持っていた爆薬を一つ投げる。
すると避けるまでもないと思ったのか、上弦ノ参はそれを掴もうとする仕草を見せる。
…ばかね。
ドォォォォオン!
閃光と轟音が辺りに響き渡る。
うるさくて…やっぱり苦手。
煙がはれたその先に見えたのは
「…っ貴様…俺に何をした…!?」
片腕が見事に吹っ飛んだ上弦ノ参の姿。
「聞かれて正直に言うと思う?」
「…小賢しい!」
私の方に向かってくる様子をいち早く察知し、その踏み込んだ左脚に向け
シィィィィイ
呼吸の常中を深め
シュッ
クナイを投げる。
ザシュッ
「…っ力が…入らない…!?」
命中したクナイの毒の効果か、上弦ノ参は一旦その構えを解いた。
良し。効いてる。後はどれだけあいつに当てられるか。
「ッ藤の花の毒か…!っなんなんだお前はさっきから!俺と戦いたいなら…正々堂々真正面から来い!」
「正々堂々?すぐ傷が治る身体をもってるくせに何を寝ぼけた事を言ってるの?正々堂々戦いたいって言うのなら、…その吹き飛んだ右腕、回復させるんじゃないわよっ!」
シィィィィイ
クナイと爆弾が外れない程度に距離を保ち、手持ちの爆弾を次々に投げていく。
「柏木!」
「…っ私の心配をしている暇があったら…っ!…少しは…休んでください!…うるさいんで…もう…叫ばないで…っ!」
投げたクナイは、上弦ノ参の肩を掠めた。
…掠めるだけでも…充分!
「っちょこまかと…うるさい奴だ!」
途中で気がついた。この上弦ノ参は、私の攻撃を避けるばかりで、殆どやり返してくる様子がない。
…いったいどうして?鬼の癖に女は殴らない主義…とか?
意味はわからないが、時間を稼げさえすれば私としてはなんだって良い。そう思いながら上弦ノ参と睨み合っていた私の腕を、
ガッ
と後ろから引っ張ったのは
「っ炎柱様!」
「俺はもう充分休んだ…君は退がれ」
怒った顔の炎柱様だ。