第30章 2人で初めてのmerryXmas【暖和】
「明日は父上に母上、それに千寿郎もいるからあまり飲めないが、今日は二人で仲良く飲もう!」
「…え?でも私は…すぐに酔っぱらってしまうので、そんなに飲めませんよ?」
私の背中を嬉しそうに押しながらテーブルへと向かう杏寿郎さんにそう言うと
「む…そうなのか?」
杏寿郎さんは歩みをピタリと止め、悲しげな声でそう言った。
そのあまりにも悲しげな声色にくるりと後ろを振り返ると、眉の端を下げ、しょんぼり顔の杏寿郎さんと目が合う。さらに杏寿郎さんは、そのしょんぼり顔で私の目をじっと見てくる。
…っ可愛い…可愛すぎる!
きっとこんな甘えた表情の杏寿郎さんを見られるのは私だけ。そう思うと、やはりどうしようもない幸福感で胸が包まれていくようだった。
”杏寿郎さんが満足するまで付お酒にき合ってあげたい”
と、思う気持ちと
”酔っぱらってしまうとちょっとな”
と、思う気持ちの間でグラグラと揺れていると
「…今日は…クリスマスイブだろう…?」
杏寿郎さんは私の背に、その筋肉質な身体をピタリと寄せながらそう言った。
そんな風におねだりされてしまえば断れる筈もなく
「…わかりました!でも、ご存じの通り私は杏寿郎さん程飲めませんからね?私が酔っ払ってまだ飲めるって言っても…ちゃんと止めてくださいね?それを約束してくれるのなら、できる範囲でお付き合いします」
腹をくくりそう答えると
「うむ!約束しよう!」
と杏寿郎さんはそう答えた。
そう。そう答えたのに。
1時間後
”…ん…美味しい…でもちょっと…飲みすぎちゃったかも…”
”そんなことはない!ほら、君の好きな微発砲の甘い日本酒もあるんだ。もっと飲むといい”
”え?本当ですか?嬉しい!じゃあ…折角だし…飲んじゃおうかなぁ”
”うむ!いいぞ!そうしよう!”