第30章 2人で初めてのmerryXmas【暖和】
杏寿郎さんのお尻がしっかりと床についたのを確認した私は、その隣に人ひとり分ほどスペースを空けて座り
「杏寿郎さん…メリークリスマス」
そう言いながら、手に持っていた紙袋を差し出した。
杏寿郎さんはゆったりとした動作でそれを受け取り
「ありがとう。早速だが開けてもいいだろうか?」
と、私に尋ねてくる。
「はい!もちろん構いません!」
杏寿郎さんは私の返事を聞くや否や紙袋からクリスマスらしい包装が施された箱を取り出し、その包装紙を丁寧に取り始めた。
余りにも丁寧に剝がしているので
「…あの…ただの包装なので破いてしまっていいですよ?」
思わずそう声を掛けてしまった。そんな私に
「ダメだ!これは俺がすずねから初めてもらったクリスマスプレゼント!包装紙とて大事なものに変わりない!」
真剣な表情で包装紙を剥がしながらそう言った。
…この人は…どうしてこんなにも可愛くて愛おしいんだろう
今世で再会を果たし、夫婦となってから杏寿郎さんが泊まりの出張でもない限り毎日一緒に居て、槇寿郎様に呆れられるくらい愛を囁きあって(いやどちらかといえば囁かれているほうが多いのかもしれない)いるというのに、杏寿郎さんへの愛は落ち着くどころか、日々その形を大きくして行くばかりだ。
ようやく包装紙を剥がし終えた杏寿郎さんからそれを受け取り、杏寿郎さんがゆっくりとその箱を開ける。
箱を開けた杏寿郎さんは、しばらくの間黙ってその中身を見ていたが
「…っ着けてみてもいいだろうか!?」
と、きらきらと目を輝かせ私にそう尋ねてきた。
「はい。もちろんです」
私の返事を聞いた杏寿郎さんはまず一つ目
「…手触りがとてもいい…それに…とても暖かい」
こげ茶色のカシミア製のマフラーを取り出しその首に巻いた。