第30章 2人で初めてのmerryXmas【暖和】
家に着くともう時計は6時を示しており
ぐぅぅぅ
と、杏寿郎さんのお腹から盛大な音が聞こえていた。
下準備までしておいた春巻きを揚げ焼きにしている間に、杏寿郎さんにサラダとローストビーフを盛り付けてもった(盛り付けのセンスがあまり感じられないと言う点に関してはご愛嬌ということで目を瞑ろう)。
揚げたての春巻きがのっているバッドの側にいきチラチラと私に視線をやってくる杏寿郎さんの姿は、私の母性本能をこれでもかと言うほどくすぐる。
「…普通のとハムチーズ…一つずつなら食べてもいいですよ?」
「っ本当か!?」
「ふふふ…はい、どうぞ」
「ではお言葉に甘えていただこう!」
そう言いながら揚げたての春巻きに躊躇なくかぶりついた杏寿郎さんは
「熱い!美味い!」
「ハムとチーズはもっと熱いですからね?ふぅふぅしてから食べて下さいね?」
「わかった!」
と、子どもみたいで可愛かった。
準備した食事を全て綺麗に食べ尽くした後は、楽しみに待っていたクリスマスケーキの出番。
ケーキと一緒に食べようとショッピングモールで買ってきたちょっとお高めのクリスマスブレンドのコーヒーを落とし、ケーキと一緒にお盆に乗せテーブルへと持っていく。杏寿郎さんはナイフにフォーク、そしてお皿を持ち同じようにテーブルへと持ってきてくれた。
箱を開け、台紙をスッと引っ張ると
「うわぁ!このブッシュドノエル、すごく可愛いし…美味しそうです!」
クリスマスらしさ満点のケーキが姿を現した。
チョコレートクリームで表現された切り株の上に、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリーがふんだんにあしらわれ、まるでその上に粉雪が舞い落ちたかのように振るわれた粉砂糖。その隙間にちょこんと飾られたサンタクロースとトナカイ。
「…食べるのが…もったいない」
「そうだろう?パン屋である竈門少年に教えてもらったおすすめの店だ!味も間違いないだろう!」
「早速食べましょう!あ…でも…なんだか切ってしまうのがもったいないです」
ナイフを片手にブッシュドノエルを見つめながらそんなことを言うと
「ならばこのままつついて食べよう!」
と、杏寿郎さんが言った。