第30章 2人で初めてのmerryXmas【暖和】
ヒラヒラと杏寿郎さんに手を振り返していると
「次のお客様、こちらのレジへどうぞ」
と、店員さんに呼ばれ、最後に杏寿郎さんにニコリと笑いかけると呼ばれたレジの方へと進んだ。
「お待たせしました」
「いや!全く待っていない!」
「…杏寿郎さん、その椅子小さくありませんか?私がそっちに座るので、ソファの方に座ってください」
「いいのか?座ってみたら思いのほか小さくてな。お言葉に甘えさせてもらおう」
席から立ちあがった杏寿郎さんが椅子の席からソファの席へと移動した。入れ替わるように杏寿郎さんの座っていた席に腰かけると、杏寿郎さんの座っていた温もりをお尻の下に感じなんだか幸せな気分になった。
「それにしても、いまだにすずねのしたいことがわからないのだが…そのフラペチーノと関係があるのか?」
杏寿郎さんの視線が、私がテーブルの上に置いたコーヒとフラペチーノに注がれる。
「はい。じゃあ、こっちは杏寿郎さん…どうぞ」
そう言いながら、コーヒーを杏寿郎さんの方へと寄せる。
「ありがとう」
「どういたしまして。で、こっちが私」
ひとりでこのお店に来るとき、私は毎回一番小さなサイズのフラペチーノを頼む。普通の大きさでは私には少し多く、味によっては飽きてしまう事があるからだ。けれども、今日はあえて普通のサイズを選んだ。
袋から普通のそれよりは径が大きいストローを取り出し、上に空いている丸い口からスッとさしこみ、ストローに口をつけ抹茶風味のそれを吸い込んだ。
「…ん。甘くて美味しい」
「それはよかった!」
杏寿郎さんはコーヒーを冷ますようにふぅふぅと息を吹きかけた後、ひとくち口に含み
「美味い」
静かにそう言った。私はそんな杏寿郎さんに
「じゃあ…次はこれもどうぞ」
「む?それか?」
つい先ほどまで口をつけていたフラペチーノを差し出した。杏寿郎さんは首を傾げ不思議そうな表情で私が差し出した鮮やかなグリーン色のフラペチーノを見ている。
「はい…あ、でも…よく考えてみたらコーヒーの味が変わっちゃうかも…」