第30章 2人で初めてのmerryXmas【暖和】
「…っ意地悪!」
キッと私が杏寿郎さんを睨むように見るも
「わはは!真っ赤な顔をしてそんなことを言っても、ただ可愛いだけだ!それに先に俺に意地悪をしたのは君だろう?これでお相子だ」
杏寿郎さんはただただ嬉しそうに笑うだけ。
ムッと唇を突き出し、”怒っています”とアピールしていると
「ほら。いつまでもそんなかわいい顔をしていると食べてしまうぞ!」
杏寿郎さんが再び私にぐっと顔を寄せながらそう言った。
「っダメです!」
「わはは!わかっている!早く春巻きを完成させて出かけよう」
「…はい…」
お出迎えに玄関まで来ただけなのに、どれだけ時間がかかるんだろう?
そんな呆れにも似た気持ちを抱きながら、ようやく愛する夫のお出迎えが終了した。
それから手を洗い、着替えを済ませた杏寿郎さんと2人仲良く横並びになりながら春巻きを包んだ。
”…むぅ…なぜなんだ?”
食いしん坊な杏寿郎さんは、思っていた通り何度言っても春巻きの皮に対して具をたくさん巻こうとし過ぎ、杏寿郎さんの包んだ春巻きはもれなく不格好なものになっていた。
そんなところも堪らなく愛おしい。
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「やはり人が多いな」
「そうですね」
クリスマスイブの土曜日なんてどこに出かけても人でごった返している。そんなこと、言われなくてもわかっている。
それでも、だからこそ、私はクリスマスで家族や友達、そしてカップルでごった返すショッピングモールに来たかった。
「はぐれてしまっては大変だ。ここに捕まっているといい」
杏寿郎さんはそう言いながら、私がその腕にしがみつきやすいように腕と胴に隙間を作ってくれる。
「ありがとうございます」
返事をしながらぎゅっと杏寿郎さんの腕を抱き込むように胸に抱いた。
けれどもそうしてからふと気になることがあり、斜め右上にある杏寿郎さんの顔を見上げ
「…でも、こんなに人が多いとことでこんな風にしていたら…学園の生徒や保護者に見られてしまうかもしれませんよ?」
そう尋ねる。
万が一、学園に苦情でも来たらと想像すると、途端に不安になり、その筋肉でがっしりとした腕から離れようとした。