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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第29章 抱き枕はどこへ?【掌編✳︎炎風音水霞柱】


「え!?やだよ!なんで捨てなきゃならないわけ!?」

ラッコを無一郎から守るようにギュッと抱きしめる。

「だってそれ、浮気されて別れた元彼とのデートで買ったやつでしょ?」

「…それは…そうだけど」

「よくそんなの毎日抱いて寝るよね」

「いいじゃん!私の勝手でしょ!大体ね、ラッコに罪はないの!こんな可愛くてモチモチで…これを抱いてると落ち着くの!私が安眠するためには必要なの!」

ギュッと抱きしめると、やはり不思議と心がホッっと落ち着いた。そんな私に

「…すずね知ってる?」

「知ってるって…なにを?」

無一郎はコーヒーを一口飲み、紺色のマグカップをテーブルに置いた後、意地悪そうな笑みを浮かべながら

「ラッコの雄って交尾の時雌の鼻を噛むらしいよ」

「…え?」

そんなことを言ってきた。

突然知らされたラッコの生態に私はポカンと、おそらく間抜けな顔のまま固まってしまう。

「しかもその交尾は水族館では見せられないくらい激しくて、ラッコは暴力的な性欲の持ち主っていわれてるんだよ」

その言葉に抱きしめていたラッコを腕から離し、真っ黒で可愛い目をじっと見つめる。

「…なんかちょっと…イライラしてきたかも…しかも…交尾の時に鼻を噛むって…噛み癖のあった元彼と一緒じゃん」

そう思うと、途端に可愛かったはずのラッコが憎たらしく思えてくる。

「うん、決めた捨てる」

「じゃあ僕にくれない?」

「え?別にいいけど…なんに使うの?」 

まさかの無一郎からの申し出に、目を丸くしながらそう尋ねる。

「それは後のお楽しみ」

「…まぁいいけど。で、今日もご飯食べていくの?」

「もちろん」

そうして私はラッコを手放し、ちょっと寂しいなと思いながらも、ラッコの代わりに布団を抱き込むようにしながら寝る日々を送った。
 




それから数日後。


「はい。これ、僕からのプレゼント」

「プレゼント?」

"なんでこんな時期に?"と、思いながらも特に断る理由もなく、"開けてみて"という無一郎の言葉に従い受け取った包みを開けてみた。

「…っ何これ!?」

中から出てきたのは、紺色のちょっとセクシーな下着。


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