第29章 抱き枕はどこへ?【掌編✳︎炎風音水霞柱】
「あのラッコの抱き枕、クリーニングしてネットに出したら結構高く売れたんだ。期間限定品で、コアなファンがいたみたいよ。で、そのお金で買ったの」
「…っだからって…なんでこれ!?」
全くもって意味がわからない。
「僕、すずねが引き出しの奥にエッチな下着隠してるの知ってるんだ」
「…っ!?」
まさかの無一郎の爆弾発言に、私の体温は急激に上がり、パクパクと意味もなく口を動かすことしかできない。
「あれをつけてるすずねを見てみたいところだけど、あれも元彼の趣味でしょ?だからすずねには、僕が選んだ、僕好みの下着をつけてもらいたいんだ。僕の場所を奪う憎たらしいラッコだったけど、最後にいい仕事をしてくれて良かったよ」
ニッコリと笑みを浮かべ恥ずかしげもなくそういう無一郎と、恥ずかしさで真っ赤になって何も言えない私は、どっちが年上なのかわかったもんじゃない。
…私の知ってる可愛い無一郎じゃない
無一郎は、テーブルを挟んで正面に座っていた私の腕を引き寄せ、鼻がくっつきそうになる程顔を近づけてきた。
「いつまでも、子ども扱いしないでくれる?僕も立派な男だよ?6歳差なんてすぐにひっくり返してあげるから、覚悟しておいた方がいいよ」
6歳年下とは思えない色気を孕んだ目に見つめられ
ラッコよりも
無一郎の方がよっぽどやばそうじゃん
と、思ってしまった私は、もう今後無一郎のことをただの年下の幼馴染として見ることはできないのだろう。
「邪魔なラッコもいなくなったことだし、僕を抱いて寝てみない?」
「…っやだやだ!可愛い無一郎に戻って!」
年下男子の誘惑に、私はいまにもコロリと落ちてしまいそうだ。
-パターン無-END-