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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第29章 抱き枕はどこへ?【掌編✳︎炎風音水霞柱】


「すずねは…あのダンゴムシがそんなに大事なのかと…そう聞いている」

「あ…義勇さん、あれはダンゴムシじゃなくてダイオウグソクムシです」

「…すずねはあのダイオウムシがそんなに大事なのか?」

「あ、いやだから、ダイオウグソクムシです」

「…あのダンゴログソクムシがそんなに大事なのか?」

「だからダイオウグソクムシです」

「っあの生物の名称などどうでもいい」

「…っ!」

普段あまり聞くことのない大きめな声を出した義勇さんに、私は驚き固まってしまう。そんな私の様子に気が付かない義勇さんは

「俺が興味があるのはすずねの事だけだ。あんなよくわからない生き物の名称などどうでもいい。そんなことを覚えている余裕があるのなら、俺はもっとたくさんのすずねの笑顔やしぐさを覚えていたい」

私の目をじっと見つめながらそう言った。

…え?何?ダイオウグソクムシの話から…なんでそんな話に…?

頭の中が疑問符で埋め尽くされていく一方で

「俺は、何よりもすずねがだ大事だ」

クールな恋人に似合わない熱い言葉と、涼やかな目元から送られてくる熱い視線に

…ギャップ…強烈…

ドキドキしすぎて心臓が爆発しそうだった。

義勇さんは口数が少なくて口下手だ。だから嘘もつけないし(もしついたとしてもすぐわかる)、お世辞も言わない。だからふとした時に紡がれる愛の言葉はもの凄い破壊力を有している。

「…義勇さんが一番大事…です」

遅ればせながら返した私のその答えに

「…そうか」

義勇さんは満足そうな表情を浮かべた。








その後私は冷蔵庫の上に放り投げられたダイオウグソクムシを無事発見した。”どうして冷蔵庫の上なんかに隠したの?”と尋ねた私に”あの目がすずねをじっと見ているようで気に入らなかった。すずねを見つめていいのは俺だけだ”と、再び強烈な言葉を贈られた。

たまに引っ叩きたくなるくらい失礼で、気の利かない言葉をぶん投げられることも多いけれど、"そんなやりとりも悪くない"、なんて思いながら、今後も私は口下手で愛おしい恋人に翻弄される日々を送るのだろう。







-パターン義-END-

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