第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有
私の存在に気が付いた甘露寺様が杏寿郎さんの方に向けていた身体を私の方へと向けた。そして悲しげに眉の端を下げ、視線を彷徨わせながら一歩私の方へと前進する。
「…っすずねさん!…あの…昨日は」
その様子と口振りから、甘露寺様が私に謝ろうとしていることが見て取れた。
…っだめ!先に…言われてしまう!
そう焦っていると
「甘露寺」
甘露寺様の隣に立っていた杏寿郎さんがその名を呼んだ。甘露寺様が私に向けていた視線を杏寿郎さんの方へと向け、2人の目が合う。すると杏寿郎さんは、無言で首を左右振り、甘露寺様はそれだけで杏寿郎さんが何を言わんとしているのかを理解したのか、ゆっくりと頷き、口を閉じた。
そんな2人の様子に、2人の間に確かにある、私が入り込むことが出来ない絆のようなものを感じずにはいられない。
でもそれでいい
私はどう転がっても甘露寺様のように杏寿郎さんの隣には立てない。けれども、後ろで杏寿郎さんのことを支えることはできる。杏寿郎さんが疲れて立ち止まりたくなった時、ここで休んでくださいと言える…そんな場所になることはできる。
比べる必要なんてない
「…っ甘露寺様。昨日は大変失礼な振る舞いをしてしまい申し訳ありませんでした」
玄関にたどり着いた私は、急いで正座をし、額を床につけるようにしながら謝罪を述べた。そんな私の様子に
「…っだめだめ…お召し物が汚れてしまうわ!謝らなくちゃいけないのは私の方で…っとにかく顔を上げてください!」
甘露寺様はひどく慌てながら私の前にしゃがみ込んだ。
「いいえ。そうはいきません。私は…自分勝手な感情に飲み込まれ、杏寿郎さんと甘露寺様のことを疑い、誤解しておりました。二度とあんな失礼な態度をとらないとお約束いたします。どうか愚かな私をお許しくださいませ」
「…謝ってもらう必要なんてないわ!お願いですから…顔を上げて下さいぃぃぃ!」
その言葉とともに
がっ!
「…え?」
何を思ったのか、甘露寺様が私の両脇に手を差し込んできた。