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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有


「屋敷に戻れば必ず俺を迎えてくれるすずねさんがいる。温かい食事に、綺麗に洗われた服に、日中陽に干してくれた布団がある。それを思うと、不思議と活力が湧いて出る!俺にそんな風に思わせてくれるのは世界ですずねさんひとりだけだ!」

「…っ杏寿郎様…」

「俺も…俺の方こそ、すずねさんは義務感で俺に嫁いできてくれたと思っていた。それ故距離を計りかねていた。気持ちをぶつけてはならないと、我慢してきた。よもやそれが、すずねさんを傷つけていたとは…誤解をさせてしまいすまなかった」


そう言って悲しげな表情で私に謝罪を述べる杏寿郎様に、今ま感じたことのない母性本能のようなものがむくむくと湧き上がってきた。


「…っいいのです…こうして…今、杏寿郎様の胸の内を知ることが出来たので……私は、途方もないほどに幸せです!」


涙でボロボロになった顔は、ひどく不細工に違いない。けれども杏寿郎様は


「…すずねさん…貴方は、俺には勿体無い…美しく素敵な人だ」


そう言って熱さを孕んだ瞳で私のそれを覗き込んだ。


「そんな事はございません。けれどももし…杏寿郎様が心からそう思ってくれているのならば…私はこれからも、私の全てをかけて貴方を愛し、支えると誓います」

「ならば…離縁はなしと…そう言う事でいいな?」


上目遣いがちにそう尋ねてきた杏寿郎様は、やはり母性本能を擽る可愛らしさを備えており、こんな表情をこれからもっと見せて欲しいと心の底から思った。


「…ふふっ…はい。返品は…取り消し、と言う事でお願いいたします」

「それはよかった!」


杏寿郎様は太陽のような明るい笑みを浮かべた後、スッと真剣な表情に変わり


「もう、遠慮はしない」


そう言ってグッと私にその端正な顔を近づけ


ちぅ


私の唇を、まるで喰むかのように口付けた。


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