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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有


無事にソレをしまい終えた杏寿郎様と、杏寿郎様に着衣を整えてもらった私は、正座をしながら向かい合っているというなんとも珍妙な状況だ。


「では改めて、きちんと話をしよう」

「…私はもう…杏寿郎様と話すことはございません」

「そんなことはない。俺たちは…きっと互いに誤解し合っているだけだ」


杏寿郎様はその猛禽類のような瞳で私のそれをじっと見据えた。


「…そうですね。杏寿郎様"は"、私と、あの男性の関係を誤解しております」

「…ならば改めて問おう。あの男は、すずねさんのなんだ?」

「…あのお方は、数ヶ月前街で買い物をしていた際、厄介な人たちに絡まれた私を助けてくれた優しいお方です。助けていただいた…ただそれだけで、関係も何もございません。名前すら存じ上げません」

「一方的に好意を寄せられていただけと、そう言うことだな」

「…好意を寄せられていたかどうかはわかりかねますが、私は断じて夫である杏寿郎様以外とどうこうなろうと考えたことはございません」


後ろめたいことなど、何一つとしてない。


そう思い、私もただじっと杏寿郎様の瞳を見つめ返した。

杏寿郎様は


「…俺の…はやとちりと言うわけか…」


そう言いながらホッとした表情を浮かべ


「良かった…」


と、静かに呟いた。


「ならば私の誤解の方は解けましたでしょう?もう…いいでしょうか?」


私の不貞疑惑が晴れたのであればそれで十分。


そう思った私は、さっさと荷物をまとめてこの屋敷を去ろうと立ちあがろうとした。

けれども


「いいや!まだ話さなければならないことが残っているだろう!」


そう言いながは私の両肩に手を置き、それをさせまいとグッと力を入れてきた。そうされてしまえば、私の力でそれに勝てるはずもなく


「…離していただけませんか?」


そう言って杏寿郎様を睨みつけることしかできない。  

杏寿郎様は私のそんな顔をじっと見返したあと


「…今日は、今まで見たことのないすずねさんの表情をたくさん見ることが出来る良い日だ」


そう言って、優しく目を細め笑った。



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