第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有
「……」
部屋には私が咽び泣く汚い音だけが響いていた。
けれども。
「…待ってくれ。すずねさんが何を言っているのか…俺には全く理解できない」
杏寿郎さんはそう言いながら、私の上から完全に退き、着物が中途半端に引っかかった状態のまま仰向けになり、右手の甲で顔を隠している私の横に移動した。
「…っ…理解できないって…言葉のままです…馬鹿にしているんですか…!?」
「馬鹿にしてなどいない。…俺が甘露寺を好き?抱く?意味がわからない」
杏寿郎様の声色から確かに困惑した様子が感じとれ、私は恐る恐る手の甲をずらし杏寿郎様の様子をチラリと覗き見た。
私の目に映った杏寿郎様は、私と同じように中途半端に服を着てはいるが、1番隠すべき部分は丸見えになっており(しかも若干大きくなったまま)、その姿は私が普段見ている姿とは全く違って見えた。
腕を組み神妙な顔つきでしばらく黙り込んでいた杏寿郎様は
「だめだ!やはりいくら考えてもわからん!」
そう言って
「…ひゃっ」
ムンズと私の両脇の下に手を差し入れ、腕のみの力で私の身体を起こし上げた。
そのまま杏寿郎様の正面に座らされ、お互いに中途半端な格好のまま向かい合って座る格好になった。
…何かしら…この状況は…
理解が全く追いつかず、ポカンと杏寿郎様の顔を見ていると、杏寿郎様は私の顔から視線を下げしばらくそこを凝視した後
「目が行ってしまって話にならない」
そう言いながら私の着物の合わせ目を整え出した。
杏寿郎様は露わになっていた私の胸を無事着物の中に収めると
「よし!これで落ち着いて話ができる!」
そう言って満足げな顔をしている。けれども
…杏寿郎さんの杏寿郎さんが…まだ見えてるんだけど…
私としてはそうとは言えず
「…杏寿郎様…」
「なんだ!」
「…ソレ…私も気になるので…しまってくださいますか」
すっかり硬さを失ったソレにちらりと視線をやった。私の視線の向かう先に気がついた杏寿郎様は
「すまない!」
全然すまないと思っていなさそうな声色でそう言いながら、いそいそとそれをしまった。