第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有
「…っ嫌って…なんなんです!?嫌なのは…私の方です!」
杏寿郎様の前で発したことのないような大声でそう言うと、私の体にのしかかったままの杏寿郎様の身体がピクリと反応を示した。
「私は…こんなにも杏寿郎様のことをお慕いしているのに…杏寿郎様は甘露寺様のことがお好きなんでしょう!?」
私のその言葉に杏寿郎様はバッと身体を持ち上げ、目を大きく見開き私のそれを見てきた。
「何をそんなに驚くことがあるんです!?杏寿郎様の態度を見ていれば誰でもわかります!甘露寺甘露寺と…杏寿郎様は甘露寺様の話ばかりです!肩を並べ共に戦える…強くて優しくて可愛くて…ただ屋敷で杏寿郎様が帰ってくるのを待つことしかできない私なんかより…甘露寺様が好きなのでしょう!?だったらさっさと私なんか捨てて甘露寺様のところへ行ってください!甘露寺様とそうできないからって…私を代わりに抱いたりしないでっ!!!」
泣きたくなんてなかったのに。ずっと胸の奥に隠していた気持ちと共に涙が溢れ、次々と私の目尻から頬を伝い布団を濡らしていく。
ずっとずっと、物心ついた時から煉獄家に嫁ぐためと、人々を守り戦う鬼殺隊の柱であるお方の妻になる人間として恥ずかしくないようにと育てられてきた。
人々を守り戦う人の妻になり、その人に尽くし、子を孕み子孫を残すことしか自分には価値がないと思っていた。
そんな私の人生を、杏寿郎様が変えてくれた。
柏木家に生まれた私の定めだからではなく、あの日確かに、私は自らの意志で杏寿郎様の妻になることを望み、杏寿郎様はそれを受け止めてくれた。
そうだと思っていたのに。
「…っさっさと…甘露寺様のところに…行けばいいでしょ…!」
そんなのは私の願望でしかなかった。