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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有


自分に向けられた杏寿郎様の怒りに


…っ怖い…


カタカタと身体が震えた。


「甘露寺、千寿郎。すまないが俺はすずねさんと話す必要がある。先に帰るが2人はゆっくりして行ってくれ」


杏寿郎様は千寿郎様と甘露寺様に穏やかな口調でそう言っているが、依然として私の腕を強く掴み続けており、手首より上がだんだんと血色を失っていく。


「…ですが兄上!「すまない。後で文を送る」」


千寿郎様の言葉を遮った杏寿郎様は、私を掴んでいた腕を離し


…よかった…離してもらえた…


そう安心していたのも束の間。


「…ひゃあっ!」


視界が急に高くなったと思ったら、急に街の景色が流れ出し


「舌を噛む。口をしっかり閉じていなさい」


自分が杏寿郎様に米俵のように抱え上げられていることを理解した。

ものすごいスピードと、腹部にかかる圧力に


…怖い…振り落とされちゃいそう…!


恐怖でどうかなってしまいそうな私は、離縁をすると心に誓ったはずの杏寿郎様の頭部に、目を瞑りしがみつくことしかできなかった。








——————————————








「…っ痛」


屋敷まで信じられない速度で辿り着き、玄関も通らず壁を飛び越え敷地内に入り、庭に草履を投げ捨て、杏寿郎様の部屋へと連れていかれ、そのまま投げ捨てられるように杏寿郎様が仮眠していた布団に降ろされた。

外から戻った時は必ず、玄関を開け"ただいま戻った"と屋敷中に響くような大声で自身の帰宅を知らせてくれ、綺麗に草履を揃えるいつもの杏寿郎様からは考えられない行動の数々に、恐怖の感情よりも驚きの感情が上回った。

けれどもふと、先ほど杏寿郎様につかまれていた自分の手首が視界に入り、杏寿郎様の大きな手の跡がくっきりと付いてしまっているその様を目にした途端、再び恐怖の感情が上回った。


…っ…逃げなきゃ


咄嗟にそう思ったものの


ガッ


「…っ離してください!」

「無理だ」


杏寿郎様に布団に組み敷かれ、お互いの鼻がくっついてしまいそうなほどの近距離で鋭い視線を送られる。


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