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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有


「おやおや。そんなに怒らないでください。私が転びそになっている彼女を抱き止めた際、彼女は何やら急いで何処かへ行こうとしていたようだ。そんな行動を取らせたのはもしや貴方では無いのですか?」


飄々とした様子で述べられた男性のその言葉達に、杏寿郎様の特徴的な眉がピクリと大きく反応した。


…だめ…余計なことを…言わないで


そう思うも、それを言うことは男性の言葉を肯定することに繋がってしまうような気がして口を閉ざす他なかった。


「…何故そう思う」

「理由ですか?あの変わった毛色をした可愛らしい女性の声が聞こえてきた際、貴方の奥様は明らかに動揺したように見えました。奥様を動揺させ、悲しげな表情をさせるような行動を、あなたが取ったのではないですか?」

「そんなことあるわけ「今の奥様の表情を見てもそう確信を持って言えますか?」…っ!」


男性にそう問われた杏寿郎様は


「…っ嫌…やめて下さい…!」


顔を見られまいと下を向いていた私の顎を強引に掴み、上を向かされてしまった。

私と視線が合った杏寿郎様は


「…すずねさん…」


その燃えるような綺麗な色をした瞳がこぼれ落ちんばかりに目を大きく見開き


「…離して…下さい…」


困惑した表情を浮かべていた。


「ほらね?…どうやら私にも付け入る隙はあるようだ」

「…そんなものは無いっ!」


辺りに響かんばかりに発せられた杏寿郎様の声にも男性は全く怯む様子もなく


「それは貴方が決めることではありません。そうされたく無いのであれば…可愛い奥様が何故そんな顔をしているのか、ご自分できちんと確かめてみてはどうです?それでは。私はこの後仕事がありますのでこれで失礼させて頂きます。どうぞご夫婦仲良くいられることを…お祈りしています」


余裕のある笑みを浮かべ、最後に私に向けヒラヒラと手を振った男性はどこかへと去っていった。


「……」
「……」


周りは五月蝿いはずなのに、私と杏寿郎様の周りだけ音を失ったかのように静かだった。


しばらくの沈黙が続いた後


「…すずねさん…さっきの男は貴方のなんなんだ?」


杏寿郎様が私にそう尋ねてきた。その言い方がまるで


"私が不貞を働いていたのではないか"


と問われたような気がし、カッと頭に血が上った。



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