第27章 お前の未来、俺が全て貰い受ける✳︎不死川さん
「まぁ兎に角、僕から特にアドバイスしておく事はないよ。あ、でも!手土産は餡子系の和菓子がいいと思うよ!すずねの父親、物凄く餡子が好きだからな!」
おじさんのその言葉に
パチリ
すずねと俺の目が合った。すずねはニンマリと悪戯な笑みを浮かべると
「その辺は心配ありません!だって、実弥さんは無類のおはぎ好きですから」
何故か誇らしげにそう言った。
「…余計なこと…言ってんじゃねェよ…」
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それから一旦車を取りに家まで戻り、友人とルームシェアしているという割とキチンとしたセキュリティのマンションまで送ってやった。
車を運転している間
やだかっこいい!
写真撮っていいですか?
手、握ってもいいですか?
きゃあきゃあ煩くて仕方なかった。だがそんな煩さも、懐かしさと愛おしさに比べたら些細なもんだった。
「ほらァ。早く降りろォ」
目的地であるマンションに着いてしばらく経つというのに、すずねはシートベルトを外す様子はなく、なかなか降りようとしない。そして
「…まだ…一緒にいたい…」
そう小さな声で呟き、胸の前にかかったシートベルトを両手でぎゅっと握りしめている。
その姿は先ほどまでの様子とはうって変わり、しょんぼりと肩を落としてしまっている。
…さっきまでの騒がしさは何だったんだよ。っとに可愛いやつだなァ
あまりの哀楽の激しさに思わず笑いが込み上げてきそうになる。
サイドブレーキがきちんとかかっていることを確認し、ちらりと辺りを見まわしてみると、時間的に誰もいないのか、そもそも人通りの少ない道なのかはわからないが、歩いている人はいなかった。
自分のシートベルトを外し、助手席の方へと近づく。俯き黙り込んでいたすずねは俺のそんな行動には気が付かなかったようで
ギシッ
「…っ!」
助手席の背もたれに体重が掛けられたことに驚き顔を上げた。そのタイミングを見計らい
ちゅっ
軽い、啄むような口づけを一度送る。