第6章 その音を守るよ-前編-【音好きシリーズ】
「切るって言うことは…自決すれば良いってこと?」
「…っはい」
「わかった。じゃあ行っていいよ。…乱暴な事をしてごめんね」
「…っえ?」
そう言ってその男の子を解放し、距離を取った。また何か変な動きをされる前にスッと自分の日輪刀を鞘から出し
ザシュ
一切の戸惑いもなく自分の首にその刀身を押し当てた。
恐怖を感じなかったわけではない。それでも、それ以上に一刻も早く元の場所に戻らなくてはという思いの方が遥かに強かった。
「…っ!」
目が覚めると、善逸と伊之助くん、そして反対側にいる炎柱様はまだ目覚めていないようだった。けれども、
「すずねさん!起きたんですね!良かった!」
炭治郎くんがとても安心した表情でそう言った。
「…炭治郎くん…!?」
ふと目に入った、炭治郎くんの隣にいる"女の子"の存在に、私の手は咄嗟に日輪刀の柄を握りしめていた。
…鬼!?
炭治郎くんはとても慌てながら
「すずねさん…っ!違うんです!禰󠄀豆子は俺の妹で…!」
鬼であるのに妹、という禰󠄀豆子ちゃんとやらの前に立ち、私から庇うように立ちはだかった。
そう言えば、天元さんが少し前の柱合会議の時、鬼殺隊士と鬼の兄妹の裁判が執り行われたって言っていた気がする。
「…炭治郎くんの事…だったんだね」
その時、天元さんは納得はしていなかったようだが私としては、あのお館様がお認めになっているのであれば問題ないのではと思っていた。それにだ。
この子…今まで遭遇したことのある鬼とは…全然違う。嫌な音が、雰囲気が全然しない。道理ですぐそばに居たのに気づかなかったわけだ。きっと炎柱様も気づいていて、それで問題ないと思っていたはず。
私が日輪刀の柄から手を離すと、炭治郎くんは安心したのか、
はぁぁぁ
と大きな溜息をついていた。
「ごめんね。少し驚いちゃって」
そう言いながら禰󠄀豆子ちゃんの頭を優しく撫でると
むぅーむぅー!
とニコニコしながら何かを言っているようだ。
嫌だ…禰󠄀豆子ちゃんかわいい。
「良いんです!それよりも早くみんなを起こして鬼を探さないと!」
「そうだね。私が鬼を探しに行く。だから炭治郎くんは炎柱様たちをお願い」
そう言う私に向け、炭治郎くんは首を左右にフルフルと振ると
「俺が行きます」
と言った。