第27章 お前の未来、俺が全て貰い受ける✳︎不死川さん
「たくよォ…すぐバレる嘘つくんじゃねェ」
「だってぇ…実弥さんに、私のことたくさん好きになって欲しいんですもん…」
そう言いながらしょんぼりと眉の端を下げているすずねの額を
「…仕方ねェやつだァ」
そう言いながらぐりぐりと撫でてやる。
「…うん。いい。凄くいい…」
「…っ…すみません…!」
一瞬すずねのおじさんの存在を忘れ、昔の2人で過ごしていた頃のような振る舞いをとってしまい焦った。
慌てて腕を引っ込め、頭を下げる俺に
「そんな謝る必要ないから!イケメンで優しくて学校の先生…こんな素敵な人とこれから生きていけるなんて、すずねは幸せだなって…昔からすずねの事を知ってる僕としては嬉しい限りだよ」
おじさんは優しく笑いかけてくれた。
「多分不死川君なら…すずねの父親も母親も、喜んで迎え入れてくれると思う。さっき初めて顔を合わせたばっかりだけど、不死川くんは強面の割に、すんごく優しい人間だって事は理解できたからね」
店が閉まる前に押しかけ、唯一の店員であり姪っ子であるすずねをたぶらかした20代後半に差し掛かる男なんざ、普通に考えりゃ怪しさしかねぇはずだ。もし俺がその立場だったら、その姿が見えなくなるほどの強烈なパンチでもお見舞いしてやりたいところだ。
…流石、すずねの血縁ってだけことあるなァ。
おじさんは俺の方に向けていた視線をすずねの方へ移した。
「だからすずね。僕も不死川君と同じ意見だ」
そう言われたすずねは初めは悲しそうな顔をしていたが、おじさんの真剣な表情に釣られるように、その表情を真剣なものへと変えた。
「卒業して、いろんな価値観を持った人に会う。そして少し社会経験を積んだ方が、きっと働く不死川君の大変さもわかるし、近い将来子育てする時にも役に立つ筈だ。結婚はまだすぐには出来なくても…婚約期間として過ごすつもりではあるんだろう?」
そう言いながらすずねのおじさんは、すずねの方へと向けていた視線を再び俺へと寄越した。