第27章 お前の未来、俺が全て貰い受ける✳︎不死川さん
…もう少しだァ
「おい」
平静を装い俺がそう声を掛けると
「…っすみません!あの…あまりにもいい筋肉をしていたので…っ!」
すずねは酷く慌てた様子でそう言った。
「……っ…」
記憶がなくても相変わらずのその様子に思わず笑っちまいそうになるのをこらえていると
「あの、今日は、何をお求めでしょう?」
そう言って笑みを浮かべながら俺にそう尋ねてきた。久々に見るすずねの笑った顔になんだか心に優しい光が灯ったような気分だった。だが、俺が本当に見たいのは、こんな外行きの顔じゃねえ。
じっとすずねの目を見つめ
「ホトトギス」
俺はそう言った。俺のその言葉に、すずねは先ほどよりもさらに大きく目を見開き
「…ホトト…ギス…?」
確認するように、そして自分の中にその言葉を落とし込むようにそう呟いた。
それから30秒ほど、まるで電池が切れちまった機械のように静止した後
「……っ…実弥…さん…?」
すずねがぼたぼたと大粒の涙をこぼしながら俺の名を呼んだ。
そんなすずねに向け両腕を広げ
「…来いよ」
そう言うと
「…っ実弥さぁぁぁぁん!!!」
でけぇ声で俺の名を呼び、レジ横に陳列してあるものを蹴飛ばしながら俺の方に駆け寄ってきた。
ドスッ
あまりの勢いに一瞬よろめきそうになりながら
「…っ馬鹿がァ…痛ェんだよ…」
あの頃より少しふっくらとしたように思えるすずねの柔らかくて暖けぇ身体を抱きしめた。
「…う…う゛ぅぅ…実弥さ…実弥さぁん…っ…」
すずねは俺の背中に腕を回し、その顔をぎゅうぎゅうと胸板に押し付けてくる。