第27章 お前の未来、俺が全て貰い受ける✳︎不死川さん
開店したばかりで人がおらず、忙しいのかもしれない。そう思いながらも、”早くすずねに会いたい”と思う自分の気持ちに抗うことが出来ず
チーン
看板の横に置いてあったシルバーのベルを鳴らした。すると
”はぁい!ただいま参りますので少々お待ちくださぁい!”
レジの真後ろにあるバックヤードに続く部屋から声が聞こえ来た。
…やっぱり…あいつの声だァ
俺がそれを聞き間違えるはずがない。今すぐに、その部屋に行きたい衝動を抑え込み、俺はじっとすずねがそこから出てくるのを待った。
「…っお待たせして申し訳ありません!」
そう言いながら、花束を作るために使うと思われる色のついたリボンを手に持ったすずねがそこから出てきた。
…っ…全然…変わってねェじゃん
俺も人のことを言えないほど、つぅか知ってるやつら全員、昔と変わらない風貌でこの時代を生きている。その条件はすずねにも当てはまっていたようで、昔と変わらないその姿に、堪らない愛おしさが込み上げてきた。
今すぐその身体を抱きしめたい
そう思った。だがここに来る前の玄弥の話からすると、すずねは俺の事をまだ思い出してはいない。記憶を取り戻すには、鍵になる言葉が必要だと宇髄が言っていた。
んなもんは考えるまでもなくわかる
レジにリボンを置き、顔を上げたすずねと
ぱちり
と視線が合った。すずねは俺と視線が合うと、
「……っ…!?」
目を大きく見開き、驚いた様子を見せた。もしかしたら、ただ単に、こんな時間にこんな男が一人で花屋に来たことに驚いただけなのかもしれない。だが、俺にはわかる。
「……」
無言で俺に向けられるすずねの視線が、俺が昔、しょっちゅう自分で切り付けていた腕の辺りにいっていることが。胸元にあった大きな傷痕の辺りにいっていることが。