第27章 お前の未来、俺が全て貰い受ける✳︎不死川さん
その後は、すずねはすっかりいつも通りのすずねに戻って、明日のこの時間には自分がこの世にいなかもとは思えない程に普通の時間を過ごした。
こいつを、すずねをあんなにも好きになっちまうとは夢にも思ってなかった。壱弥に向けるのとは全く別の、熱く煮えたぎるような俺の気持ちを、こいつの心に、身体に刻みつけたいと思った。
…最後の最後で性欲かよ。
自分に自分で呆れちまった。
だが悪いのは俺だけじゃねえ。俺をこんなに夢中にさせた…すずねが悪ィ。
そう誰にでもなく言い訳を並べ、ぎゅっとすずねの身体にまわした腕の力を強め
"…最後に…お前を抱いても良いかァ…?"
そう尋ねた。
"…はい"
すずねの返事を聞くや否やその身体を抱き上げて、居間に連れていった。
口づけて、どこもかしこも、隅々まですずねの身体を愛でた。加減を一歩間違えれば、意識を飛ばしちまいそうになるのをすんでのところでコントロールし、その甘い声を、表情を、温もりを、自分の中に刻み込むように。そしてすずねに刻み込むように激しく抱いた。
忘れんな。
俺のことだけをずっと好きでいろ。
愛してる。
言えない気持ちを全て、すずねの身体の奥に、深く深く全て注いだ。
ふらふらのすずねを抱き抱えて、壱弥の寝る寝室に速足で向かった。
ぐっすりと深く眠っている壱弥は、まさか目が覚めた時に俺の魂がもうこの世にないかもしれないなんざ思ってるはずもなく、それが逆に俺の心を落ち着かせた。
他愛もない話をすずねとしている間に、時計の針はいつのまにか進んでいたようで
"実弥さん…お誕生日、おめでとうございます。生まれてきてくれて、私と出会ってくれて…私を妻にしてくれて、壱弥と出会わせてくれてありがとう。ずっとずっと…実弥さんのことだけ大好きです"
優しい手つきで俺の頬を撫でながらすずねがそう言った。目を優しげに細め、俺を見つめるその瞳に少しの嘘偽りもない。
"…その言葉、忘れんなよォ?"
らしくない俺の言葉にすずねは僅かに驚いた表情を見せた後
"絶対に忘れません"
そう言って花のような笑顔を浮かべた。