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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第27章 お前の未来、俺が全て貰い受ける✳︎不死川さん


"今頃気づいたのかァ"


振り返ったすずねと目が合った途端


”…実弥…さん…っ…”


そう言ってぐにゃりと表情を歪めぼろぼろと大粒の涙を流し始めた。

その涙を止めるためならなんだってしてやりたいと思った。その為なら、外で口づけんのも、背筋がぞわぞわしそうな言葉も、躊躇なくすずねに贈ることが出来た。

本当に馬鹿なやつだと思う。数年しか一緒にいられないとわかっていながら嫁にきて、子まで産んで、俺のことが好きで好きでしょうがないと、全身からその愛情をダダ漏れにして。こんな可愛い嫁を、ほかの男になんざやりたくないと思っちまうほどに…俺はこいつが好きだ。

それでも、その気持ちを押し殺して”再婚しろ”といった俺に


”…っ絶対しない!私は一生…死ぬまで実弥さんの妻だもん!壱弥がいつか大人になって出て行っても…ずっとあの家に住むもん!爽籟もずっといてくれるって…子どももあの家で育てるって…言ってくれたもん"


本気でそんなことを言ってのけるもんだから、思わず笑いをこらえることが出来なかった。


すずねの花がパッと咲くような笑顔が好きだ。
壱弥向ける柔らかい視線が好きだ。
馬鹿が付くほど素直なとこが好きだ。
優しく語り掛けるような話し方が好きだ。


その全部を言葉で表すことは到底できねえから


”お前のそういう馬鹿なところも…すげェ可愛いと思ってる…”


その言葉に全部の気持ちを乗っけた。


"…っ…私も…その優しい実弥さんの笑顔が…心の底から好き…"


そう言いながら俺の首に腕を回し

ぎゅぅぅぅぅぅぅっ

懸命にしがみついてきたすずねは


"…私の全部…これからもずっと…何があっても永遠に…実弥さんのものだから…私のこと…壱弥のこと…見守っててね?"


欲しいと思ってても、そう言えるはずがないと思っていた言葉を俺にくれた。


"…苦しいんだよ…馬鹿がァ…"


幸せすぎて、胸が苦しくなることがあるのを、俺はこの時初めて知った。






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