第27章 お前の未来、俺が全て貰い受ける✳︎不死川さん
俺に向け懸命に短い腕を伸ばしてくる姿。
重い頭に引っ張られるように
フラフラと歩く姿。
腹を指でくすぐると、キャッキャと笑う姿。
おはぎを見て目をキラキラと輝かせる姿。
死んじまえば覚えてるも何もねえんだろうが、どんな些細なしぐさも忘れちまわないように、目に焼き付けるように、その一挙一動を見続けた。
そんな俺の行動が、目についちまったんだろうな。
”野草を摘んでくる”
わっかりやしい嘘ついて、すずねが速足で玄関に行っちまった。
あいつは、今日も朝からずっと笑ってた。俺はその笑顔が心底好きだ。最後もあの可愛い笑顔で見送ってもらいたいと、そう思ってる。だが、俺のいないところで泣いてほしいとは、微塵も思わない。
”…壱弥ァ…同じ男としてお前に頼む。母ちゃんのこと…すずねのこと、頼んだぜェ?”
小さな頭を撫でながら、すずねの面影を感じる目をじっと見つめながらそういうと
”んっ!”
壱弥は勢いよく頷きながらそう言った。
”いい返事じゃねェか…”
2歳の子どもに意味なんざきっと伝わってねえし、すぐに忘れちまう。それでも、壱弥の返事にひどく安心しちまう自分がいた。
”おし。…泣き虫母ちゃん、迎えに行くぜェ”
”かっかぁ!むかえ、いくぅ!”
嬉しそうに抱っこをせがむ壱弥を抱き、あいつがいつも野草を摘みに行ってる場所に向かった。
朝から散々俺に構われていたせいか、壱弥は目的地に着く前に、俺の左肩に頭をもたげ、ぐっすり眠っちまった。
スゥスゥ
と、心地いい壱弥の寝息が俺の耳をくすぐった。
河原に着くと
"…私の…馬鹿…"
なんて言いながら、膝を抱えて小さくなってるすずねの背中が目に入った。
…やっぱりなァ。
そう思いながら、壱弥をしっかりと抱き直し、その小さな背中に向け足をすすめた。