第6章 その音を守るよ-前編-【音好きシリーズ】
「だめだ!いつ鬼が出るかわからないんだ。単独行動を許可することはできない」
「…でも、そうしないと状況の把握が…」
「それはわかっている。ならば俺も一緒に「え?待って待って!すずね姉ちゃん…鬼のところに向かってるんじゃなくて、ここに出るの…?」」
そう言って上官である柱の言葉を遮り、死にそうな顔で私を見つめる善逸に
「うん。そうだよ。だから早く見つけて対処しないと」
ニコリと微笑みながらそう告げた。
「はァーなるほどね!降ります!!俺降りまーす!!!」
騒ぐ善逸と、炎柱様の言葉を無視し、先程きた車両とは別の車両に向かおうとしたその時
「切符拝見します」
と、車掌さんが車両に入ってきたようだった。
仕方ない切符を切ってもらってから行こう。
そう思い、再び席に着いた。そんな私を炎柱様はホッとした様子で見てる。
ま、切ってもらったら行くけどね。
炎柱様、炭治郎くん、善逸くん、伊之助くんの切符を切っていく車掌さん。
4人に倣い私も切符を差し出した。けれども
…何か…おかしい気がする…
何かはわからない。それでも、どうしても嫌な感じが拭えず、わたしが手を引っ込めようとしたその時
「…っ痛…」
車掌さんが私の腕を掴み、無理やり切符を切った。
しまった!…やっぱりこの人、鬼側の人間だったんだ…!
そう思った時にはもう手遅れで、私は急激に襲ってくる眠気に抗うことが出来ないまま、半ば倒れる様に座席に座り込んだ。
「すずね、お前いつまでそんな格好でいるつもりだ。さっさと着替えろ」
気づくと私は音柱亭の私のために充てがわられた部屋に立っていた。
…私はどうして…ここに?
グルリと部屋を見回してみても、いつもの自分の部屋と何ら変わりはない。
「何キョロキョロしてんだ?もうすぐ煉獄が迎えに来んだろ。さっさと準備しろや」
私は天元さんのその言葉に違和感を覚えそちらに振り向く。
「…炎柱様が…私を迎えに?どうしてですか?」
「はぁ?どうしたもこうしたも、煉獄に飯に誘われたって言ってたのはお前だろう?気でも触れたか?」
天元さんはそう言って、私の顔をじっと覗き込んだ。
そんな事…あるのだろうか。任務終わりならともかく、迎えにきてもらってわざわざ共に食事に行く?私と、炎柱様が?