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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第27章 お前の未来、俺が全て貰い受ける✳︎不死川さん


日雇いの仕事の帰り、一刻も早くすずねと壱弥の待つ家に帰りてえと速足で街中を歩いてると


"そこのいかしたお兄さん!いい簪に櫛があるよ!見ていっておくれ!"


いつもは何もないはずの場所に、ものすげえ簡易的な出店があって、その店員らしき女が俺に声を掛けてきた。

いつもの俺なら


"んなもん俺には必要ねェ"


そう思って足を止めることすらしなかったはずだ。だがこの間、街で櫛を物欲しそうな目で見ていたすずねの顔が頭をよぎって、思わず足を止めちまった。


"ちょっと綺麗だなと思って見ていただけなので!…間違って落として、壱弥が悪戯して怪我でもしたら大変だし…買ってもらわなくて大丈夫です!その気持ちだけで、私はとっても嬉しいですから!"


一生懸命理由を探して、櫛はいらないと断ったすずねが、内心櫛を欲しいと思っていることなんざ、俺には手に取るようにわかった。


…あいつに、贈ってやりてェ


そう思った俺は、家のある方向へ向けていた足を、出店の方へ変えた。

商品が陳列された台を覗き込み、一番最初に目についたのが、あの"ホトトギスの花"が描かれた櫛だった。並べられたその櫛以外の櫛に描かれた花は、なんとなく見たことがあった。だが、その花だけは見たことがなく


"…ちっとも可愛くねェ"


そんな言葉が口をついて出た。


"あぁこれのことかい?


店の女は、俺の言葉なんか気にする様子もなく


"確かにねぇ、見た目はイマイチだけど、この花はホトトギスって言って、【永遠にあなたのもの】なんて熱い愛の言葉を秘めた花なのさ"


そう言った。


その花がホトトギスって花だってことも、そんな意味合いの言葉を持ってることもそこまで興味はなかった。それでも




永遠にあなたのもの




その言葉が俺の頭に強烈に残った。気づくとその櫛を手に持って


"…これをくれ"


そう言って値段も聞かずに買うことを決めていた。


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