第26章 私の全て、永遠に貴方のものです✳︎不死川さん※微裏有
涙は出てこなかった。それでも
…このまま、時が止まってくれればいいのに
そう思わずにはいられなかった。
実弥さんの手が私の手にすっと重ねられ
「…その言葉、忘れんなよォ?」
実弥さんの珍しく、らしくない言葉に少し驚くも
「絶対に忘れません」
実弥さんの頬に触れていた手を裏返し、ぎゅっと指と指を絡め、手を強く握りあいながらそう誓った。
それが、私と実弥さんの間で交わした最後の約束だった。
実弥さんは、冨岡様と同じように明け方頃にもう目覚めることのない眠りに落ちていった。2人とも太陽に愛されながら生まれてきたのだろうなと、そんな風に思った。
壱弥を起こそうとしたが
”かわいそうだからそのまま眠らせておいてやれ”
そう実弥さんが言ったのでその通りにした。
けれども、もう1人…いや、1匹は必ずこの場に立ち会ってもらいたく、私は急いで外に出て、実弥さんの大切な相棒である爽籟を呼んだ。
”こいつ等2人のことは俺に任せろ”
”…任せたぜ…相棒”
もっと他に話すことがあるだろうに、結局1人と1匹は、その一言ずつしか言葉を交わさなかった。言葉を交わさずとも、お互いの考えていることなんて通じ合っていたのかもしれない。
この時も、私は泣かなかった。涙のかわりにたくさんの
”ありがとう”と”愛してる”
を伝えた。実弥さんは
”最後までうるせェやつだァ”
そう言って笑い
”じゃあ、またな”
その顔は酷く穏やなものだった。
「おやすみなさい。実弥さん」
気が付くと、まだなんの知らせも出していないというのに、宇髄様が家におり、てきぱきと何やら始めてくれていた。
そんな様子を起きたばかりの壱弥を抱っこしながらぽかんと見ていると
”不死川から、自分がそうなったら直ぐに行ってやって欲しいって、ずっと前から頼まれてたんだよ”
そう教えてくれた。