第26章 私の全て、永遠に貴方のものです✳︎不死川さん※微裏有
「どうかしましたか?」
目の前に来た実弥さんにそう尋ねると、実弥さんは再び私に背を向けるように体の向きを変え
「…ん」
だらりとさせていた左腕を気持ち私の方に差し出し”掴まれ”と口に出すことはしなかったものの、私には確かにそう言っていることが伝わって来た。
「…へへっ」
私がその腕にぎゅっと捕まり
「実弥さん大好きっ!」
そう言うと
「…知ってらァ」
先程の怒鳴り声が嘘のように優しい声色でそう言ってくれた。
その後、遅れてきた善逸君と伊之助君も到着し、笑いの絶えない楽しい楽しい時間をただただ過ごすことが出来た。
こんな幸せな時間を、あと何回みんなで一緒に、実弥さんと一緒に過ごせるのかな…。
笑顔のみんなの顔を順に見ながらそんなことを考えていると
ボコン
「…うん…わかってる」
”元気出して”
そう言わんばかりに強めにお腹を蹴られ、
大丈夫…大丈夫だよ…
自分に言い聞かせるように心の中でそう唱え、お腹の中のわが子に返事をするようにポンポンとお腹を軽く叩きながら
「ほらっ!もっと飲めって!」
「馬鹿でけェ図体してるお前ェと一緒にすんじゃねェよ…」
「不死川は見かけによらず酒に弱いんだな」
「あ゛ぁん!?俺はお前ェが来る前からもう結構飲んでんだよ!」
「強がる必要はない。飲める量は人それぞれだ」
「っ冨岡ァ!お前ェは相変わらず人の話を聞かねェ馬鹿野郎だなァ!」
「俺は馬鹿野郎じゃない」
「…ぶはっ!まじでお前ら成長してなさ過ぎ!」
宇髄様と冨岡様と楽し気に(私にはそう見える)お酒を飲み交わす実弥さんを見つめるのだった。
楽しい時間は驚くほどあっという間に終わりを迎え、”次にみんなが集まるのはこのお腹の子が産まれたら”と約束を交わし、それぞれの家路についた。
実弥さんと炭治郎君が話をしたのかどうか、私にはわからなかった。けれども、優しくて根っからのお兄ちゃん気質な実弥さんが、自分と同じ運命にある後輩を放っておけるわけがないことは分かり切っていたので、私は敢えて尋ねることはしなかった。