第26章 私の全て、永遠に貴方のものです✳︎不死川さん※微裏有
その場からゆっくりと立ち上がり実弥さんの方へと近づいていくと
「…いい大人が3人木の下に座って何してたんだァ?」
呆れた顔をした実弥さんにそう尋ねられてしまう。私は後ろをチラリと振り返り、炭治郎君と冨岡様の顔を見る。
…2人にとって大事な話を…相手が実弥さんとはいえ話すわけにはいかない
そう思った私は
「…内緒です」
実弥さん鼻の先にツンと人差し指で触れながらそう答えた。そんな私の言動に
「あ゛ぁぁぁん!?すずね!テメェ亭主に隠し事するたァいい度胸じゃねぇかァ!」
実弥さんは顔を赤くしながら私にむけそう怒鳴って来た。はたから見れば夫に怒られる妻の様子にしか見えないところだが、私はそんな実弥さんの行動が、ただの照れ隠しから来ていることなんてわかっていたし、顔を赤くしながら怒鳴っている姿を可愛いとすら思っていた。
けれども
「不死川さん。自分の奥さんに”テメェ”なんてひどい言葉を使うのはよくありません!」
炭治郎君と
「そうだぞ不死川。ましてや柏木は子を身ごもっているんだ。そんな言動は控えろ」
冨岡さんには、どうやら実弥さんのかわいいかわいい照れ隠しは伝わらなかったらしく、本気のトーンでそう言ってきた。
そんな炭治郎君と冨岡様の言葉に
「っるっせェェェェえ!そもそもテメェら2人がすずねをいつまでもこんなとこに居させんのが悪ィんだろうがァァァア!」
「うわぁ!」
「やめろ、不死川」
今度は本当に怒った実弥さんが拳を突き上げながら二人を追いかけ始めた。
「…っ義勇さん!宇髄さんの家まで逃げましょう!」
「落ち着きのない男だ」
「んだとォ!?」
「っちょ…義勇さん余計な事言わないでくださいよぉ!」
逃げる炭治郎君と冨岡様に、それを追いかける実弥さん。遠ざかっていく3人を見ていると
こんな幸せな時間がずっと続けばいいのに
そう思わずにはいられなかった。
「…さて、私たちも行こうか」
遠のいて行く3人を見ながら愛おしいわが子のいるお腹を撫で、ゆっくりと歩き始めると、ぴたりと足を止めた実弥さんがこちらへと戻って来た。