第6章 その音を守るよ-前編-【音好きシリーズ】
「…っ」
嬉しさと恥ずかしさで、いつもの様な悪態はつけなかった。
その時
「天元様ー!頼まれたもの、全て準備できましたぁ!」
「須磨ぁ!あんた少しは持っていきなさいよ!」
別室に篭り何か作業をしていた須磨さんと、マキオさんが2人揃って仲良く(…はないか)現れた。
「おっ!出来たか!面倒かけたな!」
「他ならぬ天元様とすずねちゃんの為です!腕によりをかけて仕込みました!」
須磨さんのその言葉と共に、マキオさんが持っていた麻袋から出したのは
「…これ!こんなにたくさん」
8本のクナイと、天元さんがいつも持っている小さな爆弾が沢山と、解毒剤、そして止血薬だった。
「このクナイ、藤の毒の配合を少しずつ変えてある。だからそう簡単に毒を分解することは出来ないよ!鬼の身体にちゃんと刺さればそれなりの効果はあるはず。だから絶対に外すんじゃないよ!」
「マキオさん」
「この爆弾も、小さいながもかなりのダメージを与えられるはずです!たくさん作ったんです!だからじゃんじゃんつかって下さいね」
「須磨さん」
「解毒薬と、止血薬の使い方は大丈夫?出発する前にもう一度使い方を説明するから必ず私のところに来てね」
「雛鶴さん」
「てなわけで、ど派手に任務成功させて来い!」
「天元さん」
この人の、この人達の側に置いてもらえて良かった。そう心から思った。
「…っはい!音柱の継子として恥ずかしくないよう、ド派手に任務成功させてきます!」
今回お館様より課せられた私の任務は鬼の討伐ではなく
炎柱煉獄杏寿郎を補佐しろ
と言うものだった。けれどもその事実を知っているのは私だけで、炎柱様と、他に任務に参加する隊士3名はただ私が同行するとしか聞かされていないとのことだった。
"すずねにそんな事を頼んだと知ったら杏寿郎がきっと納得しないからね。杏寿郎の事、くれぐれもよろしく頼むよ"
音柱邸を出る直前、お館様から届いた直筆の手紙にはそう綴られていた。きっと有事の時、炎柱様が1人で無理をする事を懸念してのことだろう。
「きっと…私が守ります」
暮れゆく空に向け、私は呟いた。
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炎柱様はどこにいるんだろう。
鴉から炎柱様は既に乗車していると聞いていた私は、車両を移動しながらその姿を探していた。