第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
確かに、普通に考えれば、天元さんのような男性がわざわざマッチングアプリに登録して女の子を探す必要なんてないはずだ。実際、私が天元さんの姿を初めて目にした時も、”こんな人がどうして?”と思ったことをよく覚えている。
「いつも連れてた女たちの中に…あんな個展に行きたがる奴なんていなかったし、余計な詮索されそうで面倒だった」
「…なるほど…」
私がそう答えると、天元さんは私の手を握る力をぎゅっと強め
「…情けなくて…引いただろ?」
そう言った。その言葉に
「全然。むしろそうしてくれた天元さんにも…元奥さんにも…感謝したいくらいです」
間髪入れず私はそう答えた。
「…感謝?なんでだよ?」
私のその言葉が意外だったようで、天元さんは私の顔を眉間に皺を寄せながら覗き込んできた。私は、私の顔を覗き込んでくる天元さんの顔と、自分の顔の角度を合わせ
「…だって、その天元さんの情けなさと、…こんな事言ったら天元さん怒っちゃうかもしれないけど…奥さんが、天元さんのこと忘れててくれたから…私は天元さんとこうして出会うことが出来た。…私、今、人生で一番輝けてる気がするんです。天元さんが…自信がなくて卑屈になってばかりだった私を…変えてくれた!だから今度は、私が天元さんに…寂しいって思う時間がないくらい、たっくさんの好きをあげたい。…もう一度言うね?…私を…天元さんの特別にして?もし必要だって少しでも思ってくれているのであれば…私を選んで?」
天元さんの目を真っすぐ見据えそう言った。
そんな私の言葉に、天元さんはしばらく黙り込んだ後
「…俺、こんな図体してるくせにめっちゃ寂しがりだぜ?」
そんな言葉を返してきた。
「…知ってる」
更に言葉は続き
「すげぇ嫉妬深いし」
「天元さんになら…いくらでも嫉妬してもらいたい」
「寝起き悪ぃし」
「別に気にしません」
「性欲強ぇよ?」
「…っ…どんとこいです!」
握られていた右手に左手を重ねながら私がそう答えると
「…もう無理。俺、お前のことめっちゃ好きだわ」
天元さんは右手でその端正な顔を覆いながらそう言った。
”好き”
天元さんの口から紡がれたその言葉に胸がぎゅっと締め付けられる。