第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
「いや!礼を言われる必要はない!俺が彼女の連絡先を知りたいと思ったのは本心からだかなら!」
「…は?」
「…え?」
天元さんは煉獄さんのその爆弾発言ともとれる言葉に穏やかな表情から真顔に変わり、私はと言えば、煉獄さんのその言葉に不謹慎にも頬に熱が集まってしまう。
「おいこらこれ以上かき回すんじゃねェよ。さっさと行くぞォ」
「うむ!そうだな!二人とも、気を付けて帰るように!」
「じゃあまた月曜になァ」
煉獄さんはニコニコと爽やかな笑みを浮かべこちらに手を振り、不死川さんはこちらを振り返ることなく後ろ手に手を振りながら歩いて駅のほうへと消えていったのだった。
「…ちっ…煉獄の野郎本気だったのかよ。…まぁいい」
天元さんはそう独り言のように言った後、私を抱きしめる腕を離し、私の顔を覗き込むように見ながら
「…話、聞いてくれるか?」
私に向けそう尋ねてきた。
「…はい」
「うし。場所変えるか」
天元さんはそう言うと、私の手を取りぎゅっと握りしめ歩き始めた。
たどり着いたのは、そこから5分ほど歩いた場所にある公園だった。そこには誰もおらず、街灯が気持ち程度にあるくらいで、一人で来たとしたら少し怖いと感じてしまいそうな程に静かだった。
そこにあるベンチに私と天元さんはくっついて座った。調子に乗って私が天元さんの身体に寄りかかるようにその身を寄せると、天元さんが左手を伸ばし、私の右手をぎゅっと握ってくれた。
そして
「…俺が、どうしてあんなアプリに登録したかわかるか?」
「…アプリに…ですか?」
私にそう質問を投げかけてきた。
「…新たな出会いを…求めて…ですよね?」
「まぁそうと言えばそうなんだがな。……俺はな、あの個展に一緒に行ってくれる女が欲しかったんだ」
天元さんにしては珍しく言いにくそうにそう言った。
「…それって、…えっと…雛鶴さん…でしたっけ?雛鶴さんに一人で会いに行くのが…怖かったって事ですか?」
私がそう尋ねると
「…そうだ…」
天元さんは先ほどと同様に、言いにくそうな様子でそう答えた。