第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
天元さんに冷めた視線を送られ、怯えてしまっていたのは確かだ。けれども、天元さんの表情があまりにも辛そうに見え、そして煉獄さんともう一人、白髪の男性の口から発せられた言葉から、少なくとも私が連絡を絶った事で天元さんがそんな風になってしまったのだと理解すると
…嬉しい。
そう思っている自分がいた。そしてここまでくる道すがら、そして実際に今こうして8日振りに天元さんの姿を目に映した私は、自分のどうしようも出来ない気持ちを改めて実感させられていた。
…私…やっぱり……天元さんを諦めたくない。
「あぁ…気分悪ぃ。帰ェるわ」
「待て宇髄!話はまだ終わっていない!」
「おうおう帰れ帰れェ」
天元さんは煉獄さんの腕を振りほどき、マンションのある方向へと歩いて行ってしまう。私はそんな天元さんに向け駆け出し
ドンッ
「…離せよ」
「………いや」
煉獄さんや白髪さんがすぐそばにいるのも気にせず、天元さんのその太い腰回りに抱き着いた。
「…邪魔。暑い」
そう言って私の腕を解こうとする天元さんに
「私、天元さんの事が好き」
私はそう告げた。
「…俺は…お前の事……好きじゃねぇし「それでもいい」…」
抱き着く力をぎゅっと強め
「…私、あの女の人みたいに綺麗いじゃないし、スタイルも良くない。…色気だってないけど…でも、天元さんの事を思う気持ちは…きっとあの人にも、他のたくさんの女の子たちにだって負けないよ?料理だって…うどんも…もっと上手に作れるようになるから…っ!天元さんが寂しいと思ったとき…どこにいてもすぐ飛んで会いに来るから!奥さんたちの事…好きなままで良いから…そんな天元さんのところも……全部好きだから……お願い…私を選んで?」
額をその背中に押し付け
「…私が必要だって…言ってよ……」
もう止めることの出来ない気持ちを全てぶつけた。けれども
「……悪ぃ」
天元さんはそう言って私の腕を優しく振りほどき、すたすたと私から離れて行ってしまう。