第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
そんな忘れられない相手が、自分の事を呼んでいると聞いて、そこに行かない選択肢を選ぶことなんて出来るはずがない。もしそんな人がどこかにいるのであれば、ぜひその方法を今すぐ、私に教えて欲しい。
バルの入り口付近に立っていた天元さんを含めたやけに目立つ3人組を見つけ、私は駆け足で近づいた。天元さんは自分たちに近づく気配に気が付いたのか、やけに派手な髪色をした男性に支えられながら首だけを私の方に向けた。そして
「…なんで…お前がここにいんの?」
私の姿をその目に捉えた天元さんは、初めて見る酷く冷めた視線で私の事を見ながらそう言った。そのあまりに冷たい瞳に
「…っ!」
私は足を止め、後ずさりしてしまいそうになった。そんな天元さんに
「宇髄!俺は君がすずねさんを呼んで欲しいと言ったから連絡し、わざわざここまで来てもらったんだ!それなのにその態度はおかしいだろう」
支えていた天元さんをの身体を離し、腕を組み、厳しい口調でそう言ったのは、その声から先ほど電話をくれた煉獄さんであることがすぐに理解できた。
「…ったくよォ。酒に酔って女呼びつけるなんてダッセェことした挙句、その女に酷ぇ態度とるたァお前ェいつからそんな野郎になったんだァ?」
そしてもうひとつ。語尾の伸ばし方に特徴がある白髪の強面な男性は、煉獄さんと通話をしている時に、煉獄さんの長くなりそうな自己紹介を遮った人だということも理解できた。
なのに肝心なこと。天元さんが私を呼んでいると聞いてここまで来たというのに、あんな風に冷めた視線を送られる理由が理解できない。
「…うるせぇな。お前らにそんなこと言われえる筋合いなんざねぇんだよ」
「っは!今週の頭からやけに荒れてるたァ思ってたが、ようやくその理由が分かったぜ」
「はぁ?別に俺は荒れてなんかねえよ」
「残念だがそうは見えないな!君がここまで酒に酔っている姿も久方ぶりにみる。あの時は確か宇髄の昔の奥方が「っ黙れ!」…往来でそう叫ぶものじゃない。彼女も怯えているだろう」