第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
「あの…その煉獄杏寿郎さんが私になんの用でしょうか?というより…どうして私の番号をご存じなんですか?」
私がそう尋ねると
"電話番号は同僚の宇髄に聞きました!正確に言えば、自分の電話だと出てもらえないから代わりにかけてくれと頼まれました!"
「…っ!」
煉獄杏寿郎さんはそう答えた。
そうだ。どこかで聞いたことのある学校名だと思ったら、天元さんの勤務先の学校だ。
そう気が付いた途端、私の心臓はドキドキと大きな音を出し騒ぎ始めた。そして驚きのあまり私が何も言えないでいる間に煉獄さんは相当マイペースな人なのかどんどん勝手に話を進めていく。
”宇髄なんだが、珍しく酒に酔ってしまったようですずねさんを呼んで欲しいと聞かないんだ。こんな時間に女性を呼び立ててしまうのは大変心苦しいのだが、宇髄のマンションの最寄り駅の側にある和風バル・サーディンに来て欲しい”
煉獄さんのその言葉に、私の心は激しく揺さぶられ、考えるまでもなく
「行きます!今すぐに!」
そう答えていた。
”それはよかった!どれくらいでこちらに到着できるだろうか?”
幸い今私がいるショッピングモールは駅の近くであり、宇髄さんのマンションのある駅まで乗り換えなしで行ける。頭の中で駅まで徒歩で向かう時間、電車に揺られる時間を計算し
「たぶん…30分弱で到着すると思います」
私はそう答えた。
”そうか!では気を付けて来てください!”
「はい!…あの…天元さんのこと…よろしくお願いします」
”うむ!承知した!”
プツッ
通話が終わるや否や私はスマートフォンを乱暴にカバンの中に突っ込み、
…いかないと!…天元さんが…私を待っててくれてる!
人目も憚らず小走りで店の外へと向かった。
もう考えるのはやめよう。夢だったと思って忘れよう。
この1週間、ずっとそうやって自分に言い聞かせてきた。それでも、私に変わるきかっけをくれた人をそんな簡単に忘れることなんて出来るはずもなく、”また大勢の中の一人でもいいから”と思う自分と”それじゃあだめ”と思う自分が何度も何度も戦っていた。