第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
その夜、マッチングアプリのメッセージ機能を通じて、天元さんから言葉の通り連絡先が送られてきた。その際に
”ピアス忘れてる。後で取り来いよ”
私の目論見通り、天元さんからそう言ってもらえ、天元さんとの関係が何とか途切れず繋がったことに酷く安心したのだった。
天元さんの家に泊ったあの日から2か月程が経過していた。
「え?じゃあ何?週に1回、天元さんの家に泊ってんすか?」
「…一応…お泊りはさせてもらってます」
木曜日の今日、急遽代休をもらえた私はあの日私の髪型を劇的に変えてくれた天元さんの後輩さん、眞壁さんの美容室に来ていた。アシスタントも雇わず、たった一人ですべての業務を執り行っており、他のお客様とも居合わせることがなかったので、私と眞壁さんは天元さんの話に花を咲かせていた。
「へぇ…珍しいっすね」
「そうなの?」
「はい。天元さん基本的に同じ女と長く付き合わないんで。大体長く持って…1か月位だったかな」
「…そう…なんだ…」
眞壁さんのその言葉に、なんだか”自分が他の子とは違う”と言ってもらえているようで嬉しかった。
けれども、私にはどうしても気がかりなことがあった。
「…でもですね…こんなことをお話しするのはちょっと恥ずかしいんですけど、実は……私、この2か月の間、1度たりとも天元さんに手を出してもらえたことがないんです」
「………は?……え?」
「呼び出されるのは大体が金曜日なんですけど…呼び出し文句はいっつも”うどん食いてえ”、なんです。もちろん夜ご飯と朝ごはん両方うどんにするわけにはいかないし、材料を持参して他のものも軽くですが作りますよ?でもいっつも朝ごはんはうどん食いてえって言われて…。私、女として見てもらえてないんですかね?他の女の子たちは普通に抱いてもらえてるんですよね?…何が私に足りないんだと思います?」
手に持っていた雑誌から視線を上げ、鏡越しに眞壁さんを見ると
「…どうかしましたか?」
目をまん丸くして私の顔を凝視していた。